目次
📖引用原文(日本語訳)
一三*
前にはあったが、そのときには無かった。
前には無かったが、そのときはあった。
前にも無かったし、のちにも無いであろう。
また今も存在しない。
🔍逐語解釈と用語の意味
表現 | 解釈 |
---|---|
前にはあったが、そのときには無かった | 「過去」に存在していたが、「現在」には消えていたもの。記憶・関係・存在などの一時性を示す。 |
前には無かったが、そのときはあった | 「今あるもの」は、過去には無く、後から生まれたものに過ぎない。 |
前にも無かったし、のちにも無いであろう | 永続するものなどなく、すべては一時的な因縁のあらわれにすぎない。 |
今も存在しない | 実体的な“固定した存在”は、今この瞬間にも空(くう)である。 |
これは仏教の「空観」──
すべてのものは変化し、縁によって生まれ、実体がない(空)
という哲学を端的にあらわしています。
🧘♂️全体の現代語訳(まとめ)
あると思っていたものは、実はなかった。
なかったものが、突然現れることもある。
過去にもなく、未来にも続かない。
そして今この瞬間にも、確かにあると思える“それ”は、
本質的には存在しないのだ。
この世界に「確かなもの」「変わらないもの」はなく、
すべては移ろい、消え、また現れては消えていく、
幻(まぼろし)のような現象の連なりにすぎない。
💡解釈と現代的意義
この詩句は、仏教的な「無常」と「空(くう)」の感覚を、
非常にコンパクトな形式で示しています。
私たちは何かを「ある」「ない」と判断し、
それに喜び、執着し、あるいは苦しみます。
しかしこの句は、それらすべてが「一時的にそう見えているだけ」であり、
実体はどこにも存在しないと告げています。
それは一見虚無的ですが、実はとても解放的でもあります。
「失ったもの」も、「得たもの」も、
それはすべて流れの中の一瞬の波にすぎないのです。
💼ビジネスにおける適用
観点 | 適用内容 |
---|---|
執着からの自由 | 地位・役職・名声など、過去に「持っていた」ものを失っても、それは変化の中の一場面にすぎない。 |
柔軟な対応力 | ある時はなかった仕事が生まれ、あったものが消える。すべてが変化の中にあると知れば、恐れずに対応できる。 |
不確実性への耐性 | 絶対に変わらない成功も、安定も存在しない。「変わること」を前提に計画・判断することが、逆に安定を生む。 |
価値観のリフレーム | 「ある/ない」に心を縛られず、「今、どう生きるか」に集中できる心の構えが生産性と精神の持続力を高める。 |
✅心得まとめ
「すべては現れては消え、今もまた幻のようにそこにあるだけ」
永続するものはない。持っていたものも、今あるものも、いずれ過ぎ去る。
だからこそ――手放すことで、心は自由になる。
“ある”ことにとらわれ、“ない”ことを恐れ、
“かつて”を惜しみ、“未来”を憂う――そのすべてが、
一瞬の幻想に過ぎないと知ること。
それが、仏教の智慧であり、真の安らぎの始まりなのです。
コメント