—— 言葉は、通じてこそ価値がある
孔子は、言葉や文章の本来の役割について簡潔に、しかし本質的に語りました。
「辞(ことば)とは、相手に“達する”ためのものである。それだけで十分だ。
つまり、伝わることこそが言葉の使命であり、美辞麗句や技巧ではない」と。
どんなに美しい言葉を使っても、
聞き手・読み手に伝わらなければ意味がない。
むしろ、相手が正しく理解できることが最も大切であり、
わかりやすさこそが“善い言葉”の本質であるというのが孔子の考えです。
これは、教育・文章・プレゼンテーション・対話、あらゆる伝達に通じる教えです。
伝えるために話すのであって、飾るためではない。
この原則を忘れては、言葉はただの自己満足に堕してしまうのです。
原文とふりがな
「子(し)曰(い)わく、辞(じ)は達(たつ)するのみ」
注釈
- 「辞(じ)」:言葉・文章・表現。内容を伝えるための手段。
- 「達(たつ)」:意を通じさせること、相手に正しく伝わること。
- この一言は、「伝達する」ことを最重視する孔子の言語観を示すものである。
パーマリンク候補(英語スラッグ)
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(美より明快を)words-must-reach
(言葉は届いてこそ)say-it-to-be-understood
(理解されるために語れ)
この心得は、教育者・ビジネスパーソン・作家・親・友人など、
すべての「伝える立場の人」にとっての基本原則です。
相手の理解に立脚した言葉づかいこそが、信頼と尊敬を生む鍵なのです。
1. 原文
子曰、辭達而已矣。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、辞(じ)は達(たつ)するのみ。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
- 「辞は達するのみ」
→ 言葉は、相手に意味が伝わればそれで十分である。
4. 用語解説
- 辞(じ):言葉、言い回し、表現。
- 達(たつ):通じる、意味が伝わる、本質が届くこと。
- 而已矣(じい):〜のみである、〜にすぎない(限定表現)。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った:
「言葉というものは、相手に意味が伝わればそれでよい。
技巧や華美な表現は必要ない」。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、言葉の本質と、その役割の明確な定義を与えるものです。
◆ 目的は“伝達”であって“装飾”ではない
- 言葉がどれだけ美しくても、相手に通じなければ無意味。
- 逆に、多少乱雑であっても、相手に意が通じるなら、それで十分。
◆ “伝える力”が“語彙力”より重要
- 孔子は「辞(言葉)」の目的を**“達(伝わる)”ことに限定**しています。
- 話術や文章は、伝達手段であり、それ自体が目的ではない。
7. ビジネスにおける解釈と適用
◆ 「伝わることがすべて──話すことより、通じること」
プレゼンや会議、メールにおいても、
“かっこいい言い回し”や“丁寧すぎる言葉”が本質を曇らせる場合がある。
◆ 「シンプルな言葉が、信頼と成果を生む」
余計な装飾よりも、誤解のない明確な言葉こそが実務では最も重要。
◆ 「言葉は自己表現ではなく、他者との橋」
自己満足で語るのではなく、“相手にどう伝わるか”を基準に言葉を選ぶべき。
◆ 「“通じたかどうか”で評価する文化を」
報告・連絡・相談においても、
「言った」ではなく「伝わった」かを評価する姿勢が、組織の生産性を高める。
8. ビジネス用心得タイトル
「言葉は伝わってこそ意味がある──飾りより、達する力」
この章句は、伝える力・共感の力・誤解のない対話のあり方を考える上で、
現代のコミュニケーションにおいても極めて示唆に富んだものです。
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