目次
📖引用原文(日本語訳)
七*
飢は最大の病であり、
形成された存在(=わが身)は苦しみである。
このことわりをあるがままに知ったならば、
安らぎ(ニルヴァーナ)に専念するものとなるであろう。
🔍逐語解釈と用語の意味
表現 | 解釈 |
---|---|
飢は最大の病 | 生理的な空腹にとどまらず、欲求・渇望(タṇhā)そのものを「飢え」と捉える。尽きぬ欲が心を蝕む。 |
形成された存在(サンカーラ) | この「わが身」は五蘊(色・受・想・行・識)によって仮に成り立つ集合体であり、常住ではないもの。 |
苦しみである(ドゥッカ) | 存在自体が不安定・不満足であり、老・病・死・離別・得られない苦を内包する。 |
あるがままに知る(ヤーターブータ) | 事実を事実として直視し、幻想や妄想ではなく、真理に基づいて世界を観る仏教的智慧のこと。 |
安らぎに専念する | ニルヴァーナ(涅槃)=煩悩の火が完全に消えた状態を目指す心の傾き。 |
🧘♂️全体の現代語訳(まとめ)
飢え――それは欲望としての病である。
そして「わが身」というこの存在そのものもまた、常に苦しみの源である。
もし、この現実をあるがままに見つめ、知り尽くしたならば、
人は自然と、煩悩や執着のない「安らぎ(ニルヴァーナ)」を目指して生きるようになるだろう。
💡解釈と現代的意義
この教えは、「現実に存在することそのものが苦しみである」とする**仏教の核心(苦諦)**を簡潔に表現しています。
欲望=飢えに突き動かされ、手に入れてはまた次を求め、不安・競争・不満に囚われてしまう私たち。
さらにこの「身体」も、老い・病・死を避けられず、決して永続的な幸福を保証してはくれない――。
この現実を直視できたとき、人はようやく「本当の幸福」を求める心に目覚めるのです。
それは、「もっと得ること」ではなく、「満たされないことに気づいて手放すこと」。
つまり「ニルヴァーナに向かう心の転換」がここに説かれています。
💼ビジネスにおける適用
観点 | 適用内容 |
---|---|
欲望のマネジメント | 常に成果や成功、他人の評価を求め続けることは「飢えの病」であり、満たされない苦しみを生む。過剰な目標設定は心の病因にもなり得る。 |
キャリアの本質理解 | 地位・収入・名声に執着する働き方から、「何のために働くか」という価値に目覚めることで、本質的な満足と安定が得られる。 |
持続可能性の視点 | モノ・情報・成果の過剰な追求から一歩引き、持続可能で静かな成長を志向する経営・ライフスタイルが、結果的に安定と尊敬を生む。 |
ウェルビーイングの再定義 | 安らぎとは、環境や他人に依存せず、「今ここに満足できる心」によって達成される精神的な安定状態である。 |
✅心得まとめ
「欲望は病、存在は苦。そのことを知る者は、静かに解き放たれる」
渇望と執着が続くかぎり、人は満たされることはない。
だからこそ、あるがままに「飢え」と「存在の不完全性」を知ったとき、人はようやく“安らぎ”を選ぶ自由を得る。
それは逃げることではなく、「深く見つめて手放す」という智慧の選択である。
ビジネスの世界でも、「追い続ける」から「整える」へと価値観を転換する時代へと進んでいるのではないでしょうか。
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