どんな人を友とするか――
それは、どんな自分になっていくかを決めることである。
孔子は、友人には「自分に益をもたらす者」と「自分を損なう者」があると断言した。
正直な人、誠実な人、知識のある人と親しくすれば、自分もその影響を受けて成長できる。
反対に、体裁ばかり気にして責任を取らない人、何でも同調するばかりで本心を見せない人、口先ばかりの人とは関わるべきではない。
彼らは一見、波風を立てない付き合いやすい存在に見えるかもしれない。だが、その関係の中では真実も成長もない。
友を選ぶことは、自分の人格形成に直結する。
その意味で、友選びは人生を選ぶ行為なのだ。
【原文引用(ふりがな付き)】
「孔子(こうし)曰(い)わく、益(えき)する者に三友(さんゆう)あり。損(そん)する者に三友あり。直(なお)きを友とし、諒(まこと)あるを友とし、多聞(たもん)を友とするは益なり。便辟(べんぺき)を友とし、善柔(ぜんじゅう)を友とし、便佞(べんねい)を友とするは損なり。」
【現代語訳・主旨】
自分にとってプラスになる友人が三種類ある。
ひとつは率直にものを言ってくれる人。
ひとつは誠実で裏表のない人。
ひとつは物知りで多くを教えてくれる人。
逆に自分を損なう友人も三種類ある。
ひとつは体裁ばかり気にして正直さがない人。
ひとつはやたらと優しく合わせてくるだけの人。
ひとつは口先だけで調子のいいことばかり言う人。
【注釈】
- 「直(なお)き人」:率直で正義感のある人。時に耳が痛くても正しいことを言ってくれる存在。
- 「諒(まこと)ある人」:誠実で信頼できる人。約束を守り、心がぶれない。
- 「多聞(たもん)の人」:知識や見識のある人。さまざまな経験から学ばせてくれる。
- 「便辟(べんぺき)」:上辺を取り繕うだけで誠実さのない人。責任を回避しがち。
- 「善柔(ぜんじゅう)」:柔らかく優しく見えるが、実は本音を見せず迎合するだけの人。
- 「便佞(べんねい)」:口先だけでうまく取り入ろうとする人。実体のないお世辞屋。
原文:
孔子曰、益者三友、損者三友。
友直、友諒、友多聞、益矣。
友便辟、友善柔、友便佞、損矣。
書き下し文:
孔子(こうし)曰(いわ)く、益(えき)する者に三友(さんゆう)あり。損(そん)する者に三友あり。
直(なお)きを友とし、諒(まこと)あるを友とし、多聞(たもん)を友とするは益なり。
便辟(べんぺき)を友とし、善柔(ぜんじゅう)を友とし、便佞(べんねい)を友とするは損なり。
現代語訳(逐語/一文ずつ訳):
- 孔子は言った。
- 「人を成長させる友には三つのタイプがあり、人を害する友にも三つのタイプがある。」
- 「まっすぐな人を友とし、誠実な人を友とし、見識豊かな人を友とするのは、有益である。」
- 「へつらう人を友とし、外面だけ柔らかく取り繕う人を友とし、口達者なだけの人を友とするのは、有害である。」
用語解説:
- 友直(ともなお):正直で率直に意見を言う友人。
- 友諒(ともまこと):誠実で思いやりある友人。
- 友多聞(ともたもん):見聞が広く、知識・経験豊富な友人。
- 便辟(べんぺき):おべっかを使って権力者に取り入る者、迎合的で忖度ばかりする人。
- 善柔(ぜんじゅう):表面上は穏やかで優しそうに見えるが、芯がなく流されやすい人。信念のなさを指す。
- 便佞(べんねい):口が達者で巧言を弄する、言葉巧みに他人を操る人。
全体の現代語訳(まとめ):
孔子はこう言った。
「人間の成長や成功を助けてくれる友人には三つのタイプがある。それは、率直にものを言ってくれる人、誠実で信頼できる人、見識が広く学ぶべきことを教えてくれる人だ。
反対に、自分の都合で迎合するだけの人、柔らかく見えて信念のない人、言葉巧みで中身のない人と付き合えば、自分が損をすることになる。」
解釈と現代的意義:
この章句は、**人間関係、とくに「誰を友とすべきか」**についての重要な指針を与えています。孔子は、「友人とは単なる気が合う存在ではなく、自らを高める存在でなければならない」と述べています。
- 有益な友は、自分に厳しいことを言ってくれる人、誠意ある行動で支えてくれる人、知見を与えてくれる人である。
- 有害な友は、自分に合わせてばかりで注意しない人、その場の空気に流されやすい人、口先だけで信頼できない人である。
ビジネスにおける解釈と適用:
1. 「イエスマンより、苦言を呈する仲間を持て」
率直にフィードバックしてくれる同僚や部下は、成長と信頼の源泉である。表面的な調和に甘えず、違和感を伝えてくれる人を大切に。
2. 「信頼できる“中身のある人間関係”が成功の鍵」
誠実さと思慮深さを持つ人は、信頼のネットワークを築く上で最も重要。ビジネスの継続性を担保するのは、見せかけではない人間関係。
3. 「巧言令色は、組織を腐らせる」
お世辞や耳触りの良い言葉に流されていると、やがて判断を誤る。言葉の巧みさに惑わされず、本質を見抜く目を持つことが肝要。
ビジネス用の心得タイトル:
「友は“直・誠・知”を選べ──巧言より誠実な一言が成長を導く」
この章句は、誰と共に働くか・誰とつながるかが人生やキャリアの質を決定するという、普遍的な真理を語っています。
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