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■引用原文(日本語訳)
一一*
みずから悪をなすならば、つねに自分が汚れる。
みずから悪をなさないならば、自分が浄まる。
―『ダンマパダ』より
■逐語訳
- みずから悪をなすならば:自分自身の意志と行動によって悪行を行えば、
- つねに自分が汚れる:その影響は他人ではなく、自分の心と存在を曇らせる。
- みずから悪をなさないならば:自ら悪を選ばなければ、
- 自分が浄まる:心は清らかになり、平安と徳が育まれる。
■用語解説
- 悪(あく):仏教における「悪」とは、他者や自分を害する行為・言葉・思考。三毒(貪・瞋・癡)から生まれる。
- 汚れる(けがれる):外面的な評価ではなく、内面的な清らかさが損なわれること。
- 浄まる(きよまる):煩悩や迷いから離れ、心が明るく落ち着いた状態になること。
■全体の現代語訳(まとめ)
自分自身で悪い行いをすれば、その心は必ず汚れていく。
逆に、自ら悪を避けるならば、その心は静かに、そして確実に清められていく。
心の汚れも清らかさも、他人によってではなく、自分自身の行動によって決まる。
■解釈と現代的意義
この偈は、外的な状況や他者の責任ではなく、「自己の選択」にすべてがかかっているという仏教の根本原理を簡潔に示しています。
人は時に「仕方なかった」「誰かのせいだ」と言いたくなりますが、心の清らかさを損なうのは常に「自分の決断」なのです。
つまり、私たちはどんな状況にあっても、「清くあろうとする自由」を持っているということでもあります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
倫理的判断 | 誘惑や圧力があっても、不正やごまかしに手を染めれば、それは自己の信用を損なう行為になる。 |
自己管理 | ストレス時の感情的反応(怒り・中傷など)もまた、心の汚れを生む要因であり、自律が求められる。 |
信頼構築 | 一貫して誠実な判断を積み重ねることで、「この人は清い」という無言の評価が信頼を生む。 |
内面的リーダーシップ | 組織においては、指示や命令よりも「自ら清くある人」が模範となり、周囲を自然と導く力を持つ。 |
■心得まとめ
「心を汚すのは他人ではない。自分である」
どんなときも、自分の中に「悪を選ぶか、善を選ぶか」の自由がある。
他人に責任を押しつけず、自らの心と行動を清め続ける人こそが、真に揺るがない強さと美しさを持つのである。
この偈は、現代の「自己責任論」とは異なる、深い慈悲に満ちた自己認識の道を教えています。
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