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資金繰計画表

資金繰計画表の構成

資金繰表には大きく分けて「四区分法」と「六区分法」の二つのタイプが存在する。それぞれの区分方法は以下の通り。

四区分法

当月収入に借入金や割引収入も含め、収支のバランスを計画する形式です。

  1. 前月繰越
  2. 当月収入
  3. 当月支出
  4. 翌月繰越

六区分法

一般的に使用され、不足資金を別に分離して計算する形式です。金融からの収入を除いて資金を把握し、不足部分を明確に示すため、計画が立てやすいのが特徴です。

  1. 前月繰越
  2. 当月収入(金融収入を除く)
  3. 当月支出
  4. 当月過不足
  5. 不足金充当
  6. 翌月繰越

四区分法は、当月の収入に割引や借入れといった全ての現金収入を含めて計算する。一方で六区分法は、当月の収入から金融収入を除外して収支を計算し、不足が生じた場合、その不足分を「不足金充当」として別枠で計算する方式を取る。

一般的には六区分法が採用されるケースが多い。その理由は、不足資金を明確に把握できる点にある。このため、ここでも六区分法を基準に話を進めることにする。

目次

資金繰計画について

資金繰計画は、利益計画を基盤として立てるべきものであることはすでに触れた通りだ。具体的には、月ごとの売上高に基づいて月別の資金収支を計画していくことになる。

資金繰計画を正確に立案するには、記入する数字の「計算の基礎」を明確にすることが不可欠だ。

その上で、計画の結果として運転資金の残高や長期借入金の残高がどのように推移するのかを確認しなければならない。

季節変動が大きい企業では、在庫の増減やそれに伴う「季節単名」の変動も計画に織り込む必要がある。

また、計画と実績に差異が生じた場合でも、都度計画を変更するのではなく、計画書に必要事項を書き加える形で対応し、必要な資金を正確に把握しつつ適切な対策を講じられる仕組みであるべきだ。

これらの要件を満たさない資金繰計画は、「欠陥計画」とみなされるべきだ。この観点から見ると、一般的に作成されている多くの資金繰表は、実際には欠陥を抱えた計画といえるだろう。

正しい資金繰計画の作成

では、正しい資金繰計画の作成に話を戻そう。資金繰計画書を構成するうえで、最低限必要となる表は以下の4つだ。

資金繰計画表に必要な要素

  1. 売掛金回収計画表: 月ごとの売掛金回収を予測し、実際の入金予定を管理。
  2. 買掛金支払計画表: 買掛金の支払いスケジュールを確認し、月次の支出予定を明確に。
  3. 資金残高表: 月次での資金の残高を予測し、事前にキャッシュフローの不足を把握。
  4. 月次資金繰計画表: 各月の資金収支状況を総合的に計画し、資金不足時の対応を決定。
  1. 売掛金回収計画表(巻末「第46表」参照)
  2. 買掛金支払計画表(巻末「第47表」参照)
  3. 資金残高表(巻末「第48表」参照)
  4. 月次資金繰計画表(巻末「第49表」参照)

これらの表は、年間または半年分の月次資金繰計画を支える基礎となるものである。

当月の資金繰計画を立てる際には、以下の表が必要となる。

  1. 当月資金繰計画表(巻末「第50表」参照)

この表は、当月における詳細な資金収支を把握するための重要なツールである。

月次および当月の資金繰計画書は、前述の諸表に加えて必要な付帯資料を添付し、「資金繰計画表綴」として一括して管理されるべきである。この点に関しての詳細は後述する。

さて、月次資金繰計画の作成方法について話を進めよう。資金繰計画の中で特に厄介なのは、売掛金と買掛金に関わる資金の動きだ。

まず、売掛金が全額回収されることはほとんどない。回収は月内に複数回にわたることが一般的であり、そのうち一部は現金で、一部は手形で受け取ることになる。また、手形の「サイト」(支払期限)は取引ごとに異なるため、回収時期がバラバラである点も計画を複雑にする要因だ。

一方、買掛金は多くの場合、月に一度の支払いが基本となるが、これも全額支払われるとは限らない。支払いは現金と手形に分かれ、手形の「サイト」(支払期限)も案件ごとに異なることが多い。

さらに、売掛金・買掛金の双方で「相殺」が行われるケースがあり、場合によっては廻し手形が発生することもある。これら複雑な資金の動きを正確に把握するために必要となるのが、売掛金回収計画買掛金支払計画である。これらの計画を通じて、資金の流れを明確に管理することが可能になる。

売掛金回収計画

まずは、売掛金回収計画について説明しよう。この計画表の構成は、次のようになっている。

表頭には、月別の売上高と売掛金残高に関する数値が記載される。これにより、各月の売上と売掛金の発生状況が一目で把握できる。

表側には、売掛金の回収状況と支払手形に関する情報が記載される。具体的には、現金回収額、手形回収額、および手形の「サイト」など、売掛金がどのように回収されるかを詳細に記載する。この構成により、売掛金の回収プロセスが明確化され、資金繰りの計画に反映できる仕組みとなっている。

売掛金回収計画の表頭には、月別売上高と売掛金残高を記載する。計算式は以下の通り。

(前月繰越 + 当月売上)- 相殺 - 当月回収 = 翌月繰越

なお、当月売上は利益計画に基づく売上高を用いる必要がある。また、当月回収額は回収予定月の該当欄に記入する。

手形については、「サイト」ごとに分類し、落込月に括弧付きで記入して回収分と区別する必要がある。表側では、繰越欄に受手の残高(手持ち分と割手分の合計)を記入し、それを手持ち・割手に関係なく落込月に括弧付きで記載する。この落込記入は、資金残高を正確に計算するための基礎となる。

この表に記入される数字は、表内でほぼ対角線に沿う形で、左上から右下に移動していく構造になっている。一番右の列には、月ごとの回収高がまとめられ、現金回収手形回収受手落込みの三つに分けて記載される。これらの数字が、資金繰計画表に反映される仕組みとなっている。

買掛金支払計画

買掛金支払計画表の記入方法は、基本的に売掛金回収計画表と同じである。ただし、当月買掛には外部仕入れのみを記入する。内部費用については、資金繰計画書の支出欄に当月経費として計上すれば十分だ。一般的に、経費の手形払いはほとんどなく、仮にあったとしても少額で資金繰計画への影響は小さいため、特別な場合を除いて考慮する必要はない。なお、外部仕入れの数値は、利益計画に基づくものを用いる。

ただし、利益計画に記載されている外部仕入れの数字は、売上に対応するものとなっているが、実際の仕入れはその前に行われる。例えば、在庫が1か月分と仮定した場合、4月の仕入れは5月の売上に対応する形で行われる。このため、4月の当月買掛欄には、利益計画における5月の仕入れ数字を記入することになる。

以上で、売掛金回収計画と買掛金支払計画の作成は完了した。

資金残高表

次に資金残高表について説明する。この表に記入する数字は、大きく二つに分けられる。

  1. 予め記入できる数字
  • 各勘定科目の最初の月の「前月繰越」。
  • 売掛金回収計画および買掛金支払計画ですでに計画された数字。
  1. 資金繰計画表を作成しながら記入する数字
  • これらは、資金繰計画を進める中で具体的に明らかになる数値である。

資金残高表は、これらの数字を基に資金の流れや最終的な残高を把握するための重要な役割を果たす。

支手に関しては、各月の発行と決済を対応させる形となり、受手においてはその月の回収と当月の落込みを処理する形となる。借入金については、長期・短期を問わず、既存の借入分については返済予定が確定しているため、その内容を記載しておく。一方で、資金繰り計画に基づいて新たに発生する借入金については、後から記入する形式となる。

月次資金繰計画表

最後に取り上げるのは資金繰計画表だ。この表は「一倉式資金繰計画表」と呼ばれるもので、最大の特徴は計画欄と実績欄が設けられている点にある。

この仕組みによって、計画と実績が異なった場合でも、資金繰りの実態を正確に把握することが可能になる。

区分欄の最上段には売上高が配置されている。ただし、これは資金の流れを直接示すものではないため、括弧で囲まれている。この位置に売上欄を設ける理由は、売上高の計画と実績の差が資金繰りに与える影響を金額ベースで把握するために必要だからだ(詳細な説明は後述)。それ以外の部分については六区分法に基づいており、特に補足の説明を要する点は少ない。ただし、支出欄が非常に簡潔にまとめられている点が、この形式の際立った特徴といえる。

社長にとって重要なのは、このように要約された数字を確認することであり、経費の細目をすべて支出欄に列挙したような資金繰表は、かえって視認性を損ねるだけで意味を成さない。

経費の内訳を確認したい場合は、試算表を参照すれば十分だ。仮に試算表が要約されている場合でも、経理担当者は必ず詳細な内訳を手元に保管しているため、それを提出させれば事足りる。

この資金繰計画書では、あらかじめ記入可能な項目については事前にすべて記入しておくことが前提となる。

上から順に確認すると、計画欄では、売上高(利益計画から転記)、第一カ月目の繰越金(前月からの繰越額)、現金回収(売掛金回収計画に基づく)やその他の営業外収益(利益計画からのデータ)が該当する。支出欄では、支手決済(買掛金支払計画に基づく)、現金仕入れ、人件費、経費(これら三項目は利益計画の数値をそのまま転記。ただし、賞与を月次引当として計上している場合は、引当分を除き、支給月にまとめて記入)、短期および長期借入金返済、支払利子(営業外費用と同額で記載可)、法人税、予定納税が含まれる。

つまり、支出欄の項目はすべて記入が可能であり、これにより支出の合計も事前に算出できるようになっている。

事前に記入できる項目をすべて埋めたら、次は月次の計算に移る。前月繰越金に収入を加え、支出を差し引くことで過不足を算出する。不足が出た場合は、割手または単名で補うのが基本的な手順だ。この際、どちらの方法をどれくらいの金額で充当するかについては、あまり細かく考えすぎないことがポイントである。

つなぎで利用した単名を返済した後は、すぐに借り換えを行う。その後は割手を優先的に利用し、割手で賄えない部分を単名で補えばよい。このプロセスを無理なく進めることが重要だ。(なお、割手は手持手形の8〜9割程度が限度となる。)

この方法を取る理由は、計画期間全体での不足金の総額を把握した後に、再度全体の資金繰りを検討し直す必要があるからである。

不足金を補う際には、翌月への繰越金が最低限必要な金額を確保できるようにすることが重要だ。この最低限の金額は、資金運用計画における期末の現金流動預金と同程度であれば十分といえる。

第一カ月日に発生した不足金を補うための割手と単名は、それぞれ資金残高表に記録される。割手については受取手形および割引手形の該当欄に、単名については短期借入金の該当欄にそれぞれ記入し、その結果から翌月繰越金を算出する。

第ニカ月日以降も、第一カ月日の処理手順に従えば同様に進めることができる。この手順を終えることで、資金繰計画がひとまず完成することになる。

完成した資金繰計画は、一度見直して不足資金の発生状況を詳細に確認する。その上で、補填の方法や手段について検討を行い、計画に必要な修正を加えて最適化する。

資金繰計画表の作成にあたっては、主に次のポイントが重要です。

資金繰計画表の作成ステップ

1. 売掛金回収計画表の作成

  • 売上高の予定に基づき、各月の売掛金回収額を予測します。
  • 回収は現金と手形に分かれ、手形は期限別に計画表に分けて記入します。

2. 買掛金支払計画表の作成

  • 各月の買掛金の支払いスケジュールを計画します。
  • 支払いも現金と手形に分かれ、仕入れ先ごとに支払いサイトが異なる場合、計画表で整理します。

3. 資金残高表の作成

  • 売掛・買掛の計画と資金繰計画表の収支予測を元に、月次の資金残高を把握。
  • 月次繰越の残高が適切な額か確認し、不足が見込まれる場合は早めに対策を計画します。

4. 月次資金繰計画表の作成

  • 月ごとの収支に応じた資金繰りを計画し、収入・支出を計算。
  • 利益計画に基づき、売上高や経費、手形・借入金の返済計画を立てます。

5. 実績との比較と見直し

  • 計画と実績が乖離した場合に備えて、計画を調整するための欄を設けます。
  • 計画を変更する必要がある場合でも、計画表の見直しで適切な修正を行うことが大切です。

6. 不足資金の充当方法を検討

  • 不足分の資金が発生した場合は、割引手形や短期借入金で対応するかを検討。
  • 短期借入や手形の活用を計画し、予測をもとに対応策を確定させます。

効率的な資金繰管理のためのポイント

  • 計画と実績の比較: 計画が実績と乖離する場合は、資金繰に悪影響が出ないよう即時対応。
  • 売掛・買掛の回収・支払いサイトの管理: 売掛金の回収率や買掛金の支払い状況をしっかり管理することで、月次のキャッシュフローを安定させます。
  • 季節変動の調整: 季節変動の大きな業界の場合、在庫の増減や季節ごとの収支変動に応じた計画修正を行います。

これにより、会社の資金状況の安定化を図り、収益計画や成長目標に応じた確実な経営計画が可能となります。

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