■ 引用(出典)
一四*
花を摘むのに夢中になっている人を、死がさらって行くように、
眠っている村を、洪水が押し流して行くように。
(『ダンマパダ』第18章 第14偈)
■ 逐語訳
- 目の前の花を摘むことに夢中になっている者は、
- 自分に死が近づいていることに気づかない。
- それはまるで、
- 深夜に眠りこけている村に、突然洪水が押し寄せて流していくようなものだ。
■ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
花を摘む | 世俗の楽しみ、快楽、欲望、物質的な追求に耽ることの比喩。 |
夢中になっている人 | 欲望にとらわれ、無常や死の現実に無自覚な人。 |
死(マラ) | 生命の終焉を意味すると同時に、無常の象徴。 |
眠っている村 | 無自覚・無防備な心。注意を欠いた人間社会の比喩。 |
洪水 | 突然の死や変化、災難など、避けられぬ現実の力。 |
■ 全体現代語訳(まとめ)
花を摘むこと――すなわち世の楽しみや欲に夢中になっているうちに、
人はふと死にさらわれていく。
それは、眠っている村を容赦なく押し流す洪水のように、
予期せず、しかし確実にやってくる。
無常を忘れた心に、死はいつも静かに近づいている。
■ 解釈と現代的意義
この偈は、「無常に目覚めよ」という仏教の根本思想を、強烈な比喩で語っています。
現代でも、快楽・成功・物質に没頭するうちに、自分の命の有限さ、時間の尊さに気づけなくなることがあります。死は遠い未来ではなく、日々すぐ隣にある――この自覚が、真に充実した生を導くのです。
日々の欲望や惰性のなかで「今を失う」ことへの警鐘でもあります。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用の仕方 |
---|---|
短期欲求に流されない | 目先の利益、数字、出世などに夢中になりすぎると、本質的な価値や未来の準備を見誤る。 |
変化への備え | 「まさか」の危機や転換は突然やってくる。眠った組織は洪水のような変化に流される。 |
時間の使い方 | 永遠に続くかのように働いていると、ある日「本当にやりたかったこと」を見失う。有限性を意識して今を大切にするべき。 |
■ ビジネス心得タイトル
「花に夢中なときこそ、無常が背後に立っている」
日々の中で「やるべきこと」に追われ、
「本当に大切なこと」を見失っていないか。
死と変化は、予告なく訪れる。
目を覚ませ、静かに。――そして、目覚めた一歩を踏み出せ。
この偈は、仏教が繰り返し説く「無常」「目覚め」の本質を、私たちの心と行動に直接訴えてきます。
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