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慎み・真面目さ・まごころを携えて、どこにいても仁を行う

――どこへ行っても、自分の徳を置き去りにするな

弟子の樊遅(はんち)が、孔子に「仁(じん)」とは何かをたずねた。
孔子は具体的な3つの徳目で答える。

家でくつろいでいても慎みを持ち(恭)
仕事にあたるときは真面目に集中し(敬)
人と接するときはまごころを持って接しなさい(忠)
たとえ未開の地(夷狄)に行ったとしても、この三つは決して捨ててはならない」

仁とは、特別な場所や状況でだけ行うものではなく、
日々の暮らしの中で、自分の態度にしっかりと根付かせるべきものだと孔子は説く。
そして、その徳は文化や国境を越えて通用する普遍的なものである、と。


原文とふりがな付き引用:

「樊遅(はんち)、仁(じん)を問(と)う。
子(し)曰(いわ)く、居処(きょしょ)するに恭(うやうや)しく、事(こと)を執(と)るに敬(うやま)い、
人(ひと)に与(あず)かって忠(まごころ)ならば、夷狄(いてき)に之(ゆ)くと雖(いえど)も、棄(す)つべからざるなり。


注釈:

  • 居処(きょしょ) … 自宅などでくつろいでいる普段の姿。
  • 恭(うやうやしさ) … 慎み深く、品位を持った態度。姿勢に表れる徳。
  • 敬(けい) … 真剣に事にあたり、手を抜かない誠実さ。
  • 忠(ちゅう) … 他人との関わりにおける誠実さ。思いやりと一貫性を含む。
  • 夷狄(いてき) … 異文化・未開の地とされる外国の比喩。ここでは「どこであっても変わらない徳の必要性」を示す。

1. 原文

樊遲問仁。子曰、居處恭、執事敬、與人忠。雖之夷狄、不可棄也。


2. 書き下し文

樊遲(はんち)、仁(じん)を問(と)う。
子(し)曰(いわ)く、居処(きょしょ)するに恭(うやうや)しく、事(こと)を執(と)るに敬(けい)し、人(ひと)に与(あずか)って忠(ちゅう)ならば、
夷狄(いてき)に之(ゆ)くと雖(いえど)も、棄(す)つべからざるなり。


3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ)

  • 「樊遲、仁を問う」
     → 弟子の樊遲が、仁(人としての理想的な徳)について孔子に尋ねた。
  • 「子曰く、居処するに恭しく」
     → 孔子は答えた:「普段の生活や立ち居振る舞いは謙虚で丁寧に」
  • 「事を執るに敬し」
     → 「仕事や役割にあたるときは、まじめに敬意をもって取り組み」
  • 「人に与って忠ならば」
     → 「他人との関係では、誠実さと真心を尽くすこと」
  • 「夷狄に之くと雖も、棄つべからざるなり」
     → 「たとえ未開の地・外国に行くことがあっても、この徳は決して捨ててはならないのだ」

4. 用語解説

  • 樊遲(はんち):孔子の弟子。実務的で功利的な傾向があり、しばしば孔子に問いを立てた。
  • 仁(じん):儒教の中心的な徳目。思いやり・真心・人間愛・他者との関係における理想的態度。
  • 居処(きょしょ):日常生活の中での立ち居振る舞い。
  • 恭(うやうや)しく:謙虚で礼儀正しい様子。
  • 執事(しつじ):仕事や役割、職務に取り組むこと。
  • 敬(けい):敬意をもって、まじめに丁寧に行うこと。
  • 忠(ちゅう):誠実でまごころある態度。裏表のない真心。
  • 夷狄(いてき):古代中国において文化の異なる周辺民族を指した言葉(差別的文脈を含むが、ここでは異文化圏の象徴として解釈)。
  • 棄つべからず:「捨ててはならない」、つまり「どんな場所に行っても変えてはならない」という意。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

樊遲が仁について尋ねると、孔子はこう答えた:

「日常生活では礼儀正しく、仕事においては真摯に取り組み、
人との関係では誠実であるようにしなさい。
この三つを実践できれば、たとえ異文化や外国に行くことがあっても、
それは決して捨ててはならない“仁の心”である。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、仁とは場や相手に左右されるものではなく、常に持ち歩くべき“普遍的な行動原則”であるという孔子の教えです。

  • 日常・仕事・対人関係という3つの場面すべてに“仁”は具体的な形で表れます。
  • 「どこに行っても変わらない自分の基準を持つ」ことが、真の人間的品格であると説いています。
  • また、「夷狄に之くと雖も…」という表現は、異文化・困難な環境でも自分の徳を曲げるなという強い信念の表れです。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

  • 「場所が変わっても“人間性”は変えるな」
     海外赴任、異動、取引先との関係など、どんな立場にあっても、礼儀・誠実・責任感を貫く姿勢が信用を築く。
  • 「日常・業務・対人の“基本行動”こそが仁」
     あいさつ・丁寧な対応・報連相・誠実な対応など、細かい行動の積み重ねが“信頼できる人間像”を形作る。
  • 「倫理観は“持ち運ぶもの”である」
     プロジェクトや職場を移っても、“何を守るべきか”という個人の行動原理を保つことが、長期的な評価に繋がる。
  • 「異文化対応にも通用する“仁の三本柱”」
     どんな国や地域のビジネスでも、礼儀・誠意・真摯な態度は万国共通の信頼構築要素。

8. ビジネス用の心得タイトル付き

「仁は持ち運べ──礼・敬・忠が信頼を築く行動原則」


この章句は、人間的品格の“可搬性”=どこでも通用する徳を説いた、現代においても実践的な指針です。
企業理念の体現、人材教育、グローバルビジネスマナーの根幹として活用可能です。

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