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不用意な開発を戒める

この章で挙げた例は、不用意な開発のほんの一例に過ぎない。多くの企業で、安易な開発が横行している。このような状況が単なる無駄で終わらず、企業を危機的な状況に追い込む事態を招けば、深刻な問題となる。

新商品や新事業というものは、書籍に記されたように簡単に成し遂げられるものではない。そういった本に描かれているのは、成功した事例の華やかな部分だけを切り取ったものに過ぎない。

現実の開発は、長期間にわたる苦しく地道な努力の積み重ねだ。さらに、選択を誤れば、これまでの苦労や投資がすべて無駄になる危険をはらんでいる。たとえ優れた商品が完成したとしても、販売方法を誤れば成功は到底望めない。

だからこそ、開発が何を意味し、何をすべきで何を避けるべきかについて、正確な知識を持つことが求められる。

そうした知識を身につけたうえで、社長自身が開発方針を決定し、開発テーマを選定し、その推進を指揮しなければならない。また、自ら市場を観察し分析した結果を基に、販売戦略や市場戦略を策定し、陣頭指揮を執って直接販売に取り組むべきだ。これらを社員任せにして、成功を期待することなど到底不可能である。

もし社員に任せられる程度のものなら、それは最初から「我が社の将来の収益」など期待できないものだと理解すべきだ。私の考えでは、「将来の収益を確保するための活動こそ、社長にとって最も重要な役割である」という結論に行き着く。

「今日の収益」を上げる役割は社員に任せ、「明日の収益」を生み出す活動に社長が取り組むべきである。しかし現実には、「今日の収益」に社長が奔走し、「明日の収益」を社員任せにしている社長も少なくない。これは本来の役割分担を逆転させた、誤った経営の在り方といえる。

本末転倒も甚だしい話だが、もし社員の中に、我が社の将来を築くための商品を開発し、販売戦略を立案し、それを推進して優れた成果を上げられる人材がいるのなら、その人物こそ社長としての資格を十分に備えていると言える。そうであれば、その人材を社長に抜擢し、自分は会長に退くのが賢明な選択だ。自ら将来を築けないのであれば、その方が会社のためになる。

不用意な開発を避け、社長自ら未来の収益を築く ― 成功するための経営の姿勢

新商品や新事業の開発は、会社の未来を支える重要な活動ですが、無計画な挑戦はかえって企業を窮地に追い込むリスクをはらんでいます。本章で取り上げた事例は、不用意な開発がどれほど大きな負担をもたらし得るかを示しています。新たな事業の成功には、社長が先頭に立ち、戦略的な判断を下すことが欠かせません。ここでは、経営者が未来の収益を構築するためにどのような姿勢で臨むべきかを考えます。

1. 開発には地道な努力と長期的な視点が必要

ビジネス書や成功事例には、華やかな面だけが強調されがちですが、実際の開発には地道な努力と時間がかかります。苦労して開発したとしても、商品選択や市場の見誤りで結果が水泡に帰す可能性が常にあります。そのため、社長は安易に新規事業に踏み出すのではなく、長期的な視点を持ち、どのような商品や事業が本当に自社にとって価値があるのかを見極める必要があります。

2. 開発と販売戦略の統合

いかに優れた商品が開発されても、販売戦略が不適切であれば成功には至りません。製品開発と同時に、市場の需要や競合の動向を踏まえた販売戦略を練り上げることが重要です。商品を「どう売るか」を考えることは、開発の一部であり、これを怠れば顧客の目に触れることなく埋もれてしまいます。

3. 社長が「明日の収益」に向けて先頭に立つ

新たな収益源の創出は、経営の中心を担う社長が指揮すべき領域です。社員に日々の収益を任せ、社長自身は会社の将来に必要な収益基盤を築くための計画を練ることが、経営の本来のあり方です。社員に明日の収益を任せているようでは、会社の将来を担保することはできません。

4. 社長に必要な「開発の知識と戦略的判断」

開発の方向性や販売戦略を判断するために、社長自身がその知識を身につけることが大切です。社員任せにするのではなく、自ら市場調査や戦略の立案に参加し、開発方針や販売戦略を統括することで、会社の未来を確かなものにします。

5. 将来の収益を築く人材がいる場合は積極的に抜擢を

もしも社内に、将来の収益を担う開発や戦略の推進に優れた人材がいるならば、その人材を経営陣に迎えることも一つの賢明な策です。自ら未来を築くことが難しい場合には、経営を任せられる人材を発掘・育成し、経営の最前線に立たせることで、会社の持続的な成長を実現できます。

結論

不用意な開発は、企業の資源と将来を危険にさらすリスクが大きいため、社長自らが深く関与し、計画的に進めることが求められます。新事業を始める際には、地道な努力と正確な市場分析に基づく販売戦略を怠らず、未来の収益を築くための指揮を社長が自ら執る姿勢が成功を左右します。

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