目次
■原文(日本語訳)
第2章 第19節
クリシュナは言った。
「彼が『殺す』と思う者、また彼が『殺される』と思う者、その両者は真理を理解していない。魂は殺さず、殺されもしない。」
■逐語訳
- 彼が殺すと思う者(ヤ・エーナム・ヴェッティ・ハンタールム):この魂を「殺すのだ」と考える者。
- 殺されると思う者(ヤシュ・チェーナム・マニヤテ・ハータム):自分が「殺されたのだ」と思う者。
- その両者は理解していない(ウバウ・トウ・ナ・ヴィジャーナータハ):その両者は、魂の真理を知らない無知な存在。
- 彼は殺さず、殺されもしない(ナイム・ハンティ・ナ・ハンヤテ):魂は誰かを殺すこともなく、誰かに殺されることもない。
■用語解説
- ハンタ(殺す者)/ハータ(殺される者):肉体的な行為としての「殺し」と「殺され」の主観的理解。
- ヴィジャーナータ(理解する者):知識や理解を持つ者。ここでは「真理を見抜く者」の意。
- アートマン(魂):不滅・永遠・非物質的存在であり、どんな暴力や行為によっても損なわれない本質的自己。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは語る。「誰かが『殺した』とか、『殺された』と思うなら、その人は魂の本質を理解していない。魂は、殺すことも殺されることもなく、永遠に変わらない存在である」と。
これは、行為の外的側面ではなく、霊的本質に目を向けよという教えである。
■解釈と現代的意義
この節では、「魂は不死であり、暴力や死によっても損なわれない」という観点から、**生死や暴力を超えた“存在の真理”**が語られます。
現代人もまた、「人を傷つけた・傷つけられた」という執着や恐れにとらわれがちですが、それは“本質ではないもの”への誤解による苦しみであると、ギーターは指摘しています。
この視点は、人生の中で「許し」「怒り」「恐れ」などの感情を超える智慧を育てるうえで、大きなヒントとなります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
結果と本質の分離 | 表面的な行為・評価(勝ち負け・得失)にとらわれず、その背後にある本質的価値を見極める姿勢を持つ。 |
非個人的視点の育成 | 誰かの行動に対して「攻撃された」「損なわれた」と思わず、構造的・本質的な理解に立つことで感情的反応を減らす。 |
感情の超越と冷静な判断 | 「あの人にやられた」といった主観から離れ、状況の本質を見極めることで、リーダーシップと信頼が高まる。 |
精神的レジリエンス | 外的状況(解雇・非難・対立)に左右されず、「自分の本質は損なわれていない」と知ることが、安定した判断を支える。 |
■心得まとめ
「真に存在するものは、誰にも傷つけられない」
魂(アートマン)は、不滅で永遠の存在。殺すことも殺されることもない。
他者の行為や言葉に「自分が壊された」と思うとき、それは本質を見失っている状態である。
揺るがぬ本質に立脚すれば、恐れも怒りも乗り越えられる。
次の第20節では、この魂の不滅性について、さらに詳細な論理と否定形を用いた明確な表現がなされます。
コメント