企業の経営において、目標達成を妨げる要因は外部からだけではなく、内部の要因、特に重要な役職を占める無能な幹部の存在が大きな障害となることが少なくありません。この章では、そうした状況を打開するための経営者の覚悟と行動について議論します。
1. 無能な幹部が経営に与える影響
多くの企業では、年功序列の人事制度や過去の実績に基づいて幹部が選ばれることが一般的です。しかし、それが必ずしも適任者を選ぶ結果にはつながらず、以下の問題が生じます。
- 経営計画の障害
経営計画が具体化され、明確な目標が設定されると、無能な幹部がその実行にとってどれほどの障害となるかが浮き彫りになります。 - 組織全体の停滞
無能な幹部が意思決定を行うことで、組織全体の動きが鈍り、他の社員の士気にも悪影響を及ぼします。
社長がその問題を認識しながらも、行動を起こせないことは、会社全体に悪影響をもたらし、経営計画そのものの信頼性を損なう結果を招きます。
2. 無能幹部を交代できない「理由」
社長が幹部を交代させることをためらう理由として、以下のようなものが挙げられます。
- 適任者がいない
交代させるべき適任者が見つからないため、現状を維持するしかない。 - 行き場がない
無能な幹部を別のポストに移す場所がなく、実質的に格下げを行うことへの躊躇。
しかし、これらの理由は表向きのものに過ぎず、真の理由は社長自身の決断の不備にあります。社長が苦渋の決断を避け、自分の私情や周囲の目を気にして行動を先延ばしにしていることが根本原因です。
3. 社長の決断力が企業の未来を左右する
経営計画を立てた以上、その達成には困難や障害を乗り越える覚悟が必要です。以下が社長に求められる行動です。
- 経営計画の実現に責任を持つ
目標達成を妨げる要因を放置することは、自らの掲げた決意を否定する行為に他なりません。 - 私情を超えた判断を下す
格下げや交代が個人に与える影響を心苦しく思うのは当然ですが、企業全体の利益を優先しなければなりません。 - 若手の抜擢
適任者がいない場合、思い切って若手を抜擢することを検討すべきです。若手は抜擢されたことで期待に応えようと全力で努力し、多くの場合、結果を出します。
4. 無能幹部の対処法
「行き場がない」とされる場合でも、解決策はあります。
- 象徴的なポストへの配置転換
「社長室付」や「調査室長」といった形で、実質的な役割を持たないポストに配置する。 - 部下をつけない
無能幹部に部下をつけると、部下のやる気が失われ、組織全体に悪影響を与える可能性があるため、部下をつけずに棚上げする。 - 無理に仕事を与えない
無能幹部に役割を与えることで、会社全体に大きな損失をもたらすリスクがあるため、安易に仕事を任せない。
5. 「泣いて馬謖を斬る」覚悟
三国志で諸葛亮孔明が馬謖(ばしょく)を斬った逸話は、現代の企業経営にも通じる教訓を含んでいます。
- 状況の違い
馬謖は命令違反を犯し、敗戦を招いた結果、処罰されました。一方、企業における無能幹部は意図せず業績の障害となっているだけかもしれません。 - 共通点
いずれの場合も、目標達成を妨げる結果が出た以上、厳しい決断を下す必要があります。
経営においては、結果がすべてです。たとえ過程に情状酌量の余地があったとしても、企業の未来を守るためには、「馬謖を斬る」覚悟が求められます。
6. 社長の決断が企業の命運を分ける
企業の発展にとって最も重要なのは、経営者の決断力です。特に、経営計画の実現を阻む障害に対処する際には、以下の点を肝に銘じるべきです。
- 私情を排して冷静に判断する
- 若手や新しい人材を信じて抜擢する
- 会社全体の利益を最優先に行動する
迷いや躊躇があるままでは、目標達成はおろか、社員全体の信頼も失う危険があります。社長の一つひとつの決断が、会社の未来を左右するのです。
「馬謖を斬れるか」という問いは、経営者自身がその覚悟を持っているかどうかを試される場面でもあります。その決断が、経営者としての力量と企業の未来を測る試金石となるのです。
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