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身内には冷静さを、友には即応を

肉親や家族が思わぬ災難に遭ったときには、感情に流されて取り乱すのではなく、冷静に落ち着いて対応するのがよい。
一方で、親しい友人や仲間が失敗したり苦境に陥ったときには、ためらわずに素早く、的確な支援をすることが大切である。

家族には「沈着冷静さ」を、友人には「迅速で誠実な行動」を――
心の働かせ方を場面によって変えることが、真の思いやりであり、真の人格者のあり方である。


原文(ふりがな付き)

父兄骨肉(ふけいこつにく)の変(へん)に処(しょ)しては、宜(よろ)しく従容(しょうよう)たるべく、宜しく激烈(げきれつ)なるべからず。朋友交遊(ほうゆうこうゆう)の失(しつ)に遇(あ)いては、宜しく剴切(がいせつ)なるべく、宜しく優(ゆう)たるべからず。


注釈

  • 骨肉の変:肉親に起こった不慮の事故や大きな災難。特に身内に関する非常事態。
  • 従容たるべし:落ち着いて行動すること。冷静沈着な対応を意味する。
  • 激烈(げきれつ):取り乱すような感情的な反応。激情に任せた振る舞い。
  • 朋友交遊の失:親しい友人が失敗し、困難に直面している状況。
  • 剴切(がいせつ):はっきりと的確で誠実な行動。迅速な助け。
  • 優(ゆう)たるべからず:ぐずぐずと迷い、行動を遅らせることを戒める。

※この教えは、江戸時代の『葉隠』や新井白石の『折たく柴の記』にも見られるような、日本の武士道精神にも通じています。つまり、**「場面によって冷静と行動を切り替える」**という人間力の養い方を示しています。


パーマリンク(英語スラッグ)

  • calm-in-crisis-quick-in-need(危機には冷静に、困窮には素早く)
  • act-for-friends-reflect-for-family(友のために動き、家族のために沈思する)
  • timely-action-true-care(思いやりとは、時機を得た行動)

この条文は、「誰かを思いやるとは何か」を、非常に実践的かつ的確に教えてくれます。
場面に応じた心の使い分け――それこそが、人間関係において最も洗練された態度といえるでしょう。

目次

1. 原文

處父兄骨肉之變、宜從容、不宜激烈。
遇朋友交游之失、宜剴切、不宜優游。


2. 書き下し文

父兄骨肉の変に処しては、宜しく従容たるべく、激烈なるべからず。
朋友交遊の失に遇いては、宜しく剴切なるべく、優游たるべからず。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 父兄骨肉の変に処しては、宜しく従容たるべく、激烈なるべからず。
     → 親兄弟など近しい家族との間に問題や変事が生じた時は、落ち着いて対処するのがよく、感情的に激しく対立するのは避けるべきである。
  • 朋友交遊の失に遇いては、宜しく剴切なるべく、優游たるべからず。
     → 友人関係に誤解や行き違いが起きた時は、率直かつ真剣に向き合うべきであり、曖昧にして流すような態度はよくない。

4. 用語解説

  • 父兄骨肉(ふけいこつにく):父母・兄弟など血縁関係のある親族。
  • 之變(のへん):変事、トラブル、仲違い、誤解など。
  • 從容(しょうよう):落ち着いて、ゆったりとしているさま。冷静さ・寛容さを指す。
  • 激烈(げきれつ):感情的で激しい態度。対立的で攻撃的な行動。
  • 剴切(がいせつ):率直で誠実、かつ真剣な態度。心を込めて真意を伝えること。
  • 優游(ゆうゆう):いい加減で曖昧に、適当に流すこと。悠々自適のように軽く扱う姿勢。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

親や兄弟など身内と問題が起きたときには、落ち着いて穏やかに対応すべきであり、感情的に激しくぶつかるべきではない。
また、友人関係にトラブルが生じたときは、真剣に率直に向き合って話し合うべきであり、曖昧にごまかして流すような態度は避けるべきである。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、人間関係のトラブルへの対応は“対象に応じて姿勢を変える”ことが大切であるという実践的な教えです。

  • 血縁との関係は、感情を抑えて穏やかに
     → 家族とは切っても切れない関係だからこそ、対立よりも調和・包容が必要。
  • 友情は率直に向き合うことで修復可能
     → 他人であるからこそ、誤解やすれ違いはしっかりと話して解くべきである。

このように、「立場と関係性に応じた適切な態度」を持つことが、信頼を守る秘訣であると説いています。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 「社内の“家族的関係”には、感情的対立を避けよ」

経営陣・古参社員・家族経営──深い関係性にある人との衝突は、感情的になりがちだが、激烈な対立は組織に深い傷を残す。
“冷静に、相手を立てつつ本音を語る”姿勢が必要。

● 「チーム内の人間関係トラブルは“放置”せず、率直に向き合え」

友人のような間柄でも、誤解やズレを放置すると信頼は崩れる。
優游(なあなあ)ではなく、“剴切”なフィードバックと対話が関係の再構築を可能にする。

● 「関係の深さに応じたコミュニケーションスタンスを」

すべての相手に同じ対応をせず、**“家族には寛容に”“友には真剣に”**といった関係ごとの態度調整が、組織運営の潤滑油となる。


8. ビジネス用の心得タイトル

「家族には包容、友には真剣──関係に応じた対話が信頼を守る」


この章句は、人間関係の中で「誰にどんな姿勢で向き合うか」を見極める知恵を教えてくれます。
ビジネスでもプライベートでも、「相手と関係性に合った対応」を意識することが、円滑な信頼関係構築の要です。

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