3. 革新:事業構造の変革と経済的成果の最大化
革新とは、単なる効率化や合理化に留まらず、企業の経済的成果を向上させるための構造的な変革を指します。企業の収益は事業構造によって決定されるため、事業構造の革新こそが経営計画の「核」となります。
社長が目指すべき革新は、現状の事業体質を見直し、市場や顧客の変化に対応した高収益型の事業構造を構築することです。
1. 革新のアプローチ:顧客ニーズを基軸にした変革
革新の本質は、社長が自ら市場へ出向き、顧客の要求を見極めることから始まります。以下のアプローチが革新を実現する鍵となります:
- 市場・顧客のニーズを徹底的に分析すること
- 事業構造を変革し、顧客要求を満たす体制を構築すること
2. 革新の事例:事業構造の変革と成果
① Yレストラン:味を重視する革新
Yレストランでは、原価率ばかりを重視し、本来の価値である「味」を見失っていました。社長が原価管理を優先し続けた結果、顧客満足度が低下し、業績は低迷。
革新のポイント:
- 各店舗で「顧客層に合わせた美味しい料理を二品ずつ開発する」
- 原価を気にせず、顧客満足度の最大化に集中する
結果として、商品の価値が認められ、売上は劇的に向上。高収益企業へと変貌しました。
② U社:製品のパック化とユニット化
エレクトロニクス関連部品メーカーであるU社は、部品の小型化・ユニット化を推進し、最終的には自社製機器の開発を目標としました。これは中小企業における現実的な革新事例といえます。
③ J社:顧客基盤の再構築
建築資材商社J社では、主力顧客を地方の有力建設業者としつつ、大手建設業者との取引を30%以下に抑える方針を取りました。
- 大手との連携強化:信用力向上
- 依存度の抑制:自社の自主性を維持
④ L社・T軽工業・S社:新事業への進出
- L社:低収益な鋼製家具向け錠前事業から建築業界向けへ展開し、高級化を実現。
- T軽工業:家庭器具から園芸用品へと商品開発を拡大し、事業の多様化に成功。
- S社:建材事業から公害防止工事へ進出し、新たな高収益分野を開拓。
⑤ N工業・M工業:業種転換の革新
- N工業:自動車部品から事務用品へ業種転換し、事業再生を果たした。
- M工業:ガス器具部品に軸足を移し、業界トップシェアを確立。
⑥ K工業:縮小という革新
石油ショック後、K工業は減速経済への対応として、30%の減員を伴う事業構造の再編成を実施しました。
「縮小」は成長を目指すよりも困難な決断ですが、経営の安定と未来への布石となりました。
3. 革新の目的と重要性
革新は、企業が市場や顧客の要求に応え続けるための手段であり、その本質は事業構造の高収益化にあります。
- 革新の目的:高収益かつ安定した経営体質の構築
- 革新の視点:市場・顧客の変化に柔軟に対応し、企業自体が変わり続ける
4. 革新の兆候:2年以上変化がない場合の危機感
市場や顧客の要求は絶えず変化しています。もし2年以上にわたり事業に大きな変化がないとすれば、それは顧客ニーズとの乖離を意味します。この場合、次のステップが不可欠です。
- 事業全体の総点検を実施する。
- 現状を冷静に分析し、再構築する方向性を見つける。
5. まとめ:革新は企業の生命線
革新とは、経済的成果を最大化するための「構造的変革」です。市場や顧客の要求を基軸に、柔軟に事業構造を見直し続けることで、企業は高収益化と持続的な成長を実現します。
- 市場を見極め、顧客の要求に応えること
- 事業構造を常に革新し、高収益体質へ転換すること
「革新なき企業は衰退する」――社長自身が市場に出て、変革への意志と行動をもって未来を切り開くことが不可欠です。
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