新商品の相談に訪れる企業のほとんどが、単品の商品だけを持ち込んでくる。その多くが日用品や雑貨に分類されるものだ。
日用品雑貨にあまり興味を惹かれないことについては、すでにク王様のアイディアクで触れているが、人間というものはどうしてこうも型にはまった考え方しかできないのだろうか。それは、マーケットの実態を知らず、自分たちの側から考える以外に方法がないからだろう。
単品にこだわるのは、事業全体の仕組みを理解していないからだ。その結果、単品だけで簡単に商売になると勘違いし、まずチラシを作成し、次に特約店を募集するという流れに陥る。そして、特約店はすぐに見つかり、売上が一気に伸びるはずだと信じ込む。しかし、その期待はほとんどの場合、現実とはかけ離れており、夢が実現することは稀だ。
単品で商売が成り立つのは、第一に多品種化が前提となる場合だ。既存の商品群に新たな戦力を加える形になるため、商品自体の競争力がしっかりしていれば、売上の伸びを期待することができる。
これは、既存の販売チャンネルが整備されているからこそ可能なことであり、新しいマーケットに単品だけで突如参入しても、簡単に売れるものではない。なぜなら、販売チャンネルそのものが存在していないからだ。
仮に、粘り強い販売促進活動によって一時的に販売が成功したとしても、単品では販売費用が割高になり、採算を維持するのは非常に困難だ。また、単品のもう一つの大きな欠点は陳腐化だ。一度陳腐化してしまえば、それで商機は終わりを迎える。
こんなことは少し考えればすぐにわかるはずだが、それを考えようとしないのは「天動説」に囚われているからだ。商品さえ開発すれば、必ず顧客が買ってくれると信じ込んでいる。この「天動説」の思い込みこそが厄介であり、恐ろしいのだ。
新商品を事業化するには、単品では不十分だと考える必要がある。どうしても「商品群」という形で展開しなければならない。問屋が低マージンで運営できるのは、多くの商品を同じ販売チャンネルに流し込むことで、一品あたりのコストを低く抑える仕組みが成り立っているからだ。この効率性がなければ、事業としての持続性は難しい。
そのため、メーカーが新商品を企画する際には、問屋のように「同一マーケット、同一販売チャンネル」で展開できる商品を揃える視点が必要だ。単品の開発にとどまらず、常に「商品群」の開発を視野に入れるべきである。これにより、効率的かつ持続可能な事業展開が可能になる。
もし「商品群」としての構想がまとまらないのであれば、そうした商品に手を出すべきではない。そして、この商品群の構想は、社長が社内で机に向かって考えていては生まれない。社長自らが外に出て市場を観察し、マーケットの実態を深く理解することで、初めて実現可能になるものだ。
単品の商品で事業を始めるのは、一般的にリスクが高く、安定した収益につながりにくいです。多くの企業が単品で成功するビジョンを持って商品開発に取り組みますが、以下の理由で、単品では事業として成り立たないことが多いです。
1. 販売チャンネルと多品種の重要性
- 単品では、既存のマーケットに新商品として加えるにはよいかもしれませんが、新たなマーケットを開拓するには力不足です。既に確立した販売チャンネルを持つ企業なら多品種化の一環として販売しやすくなりますが、単品を新たに売り込むのはコストが高く、特約店や流通業者が安定した利益を得るのも難しくなります。
2. コスト面での不利
- 単品販売では販売促進や宣伝に多大なコストがかかり、商品単価に対する販売費用が割高になりがちです。売上が一定に達しない限り、採算ラインを確保することが難しく、赤字になりやすいです。
3. 商品の陳腐化リスク
- 単品の場合、マーケットに新しい競合が登場したり、流行が変わると、その商品の寿命が尽き、すぐに陳腐化してしまう可能性が高くなります。単品が売れなくなると、会社全体の売上に直接影響を与えるリスクがあります。
4. 商品群の必要性
- 単品でなく、複数の商品からなる「商品群」を開発することで、販売チャネルに流す際にコストが分散され、マージンが確保しやすくなります。また、商品群は流行や競合による影響を分散することもできます。
5. 市場調査と構想力の欠如
- 商品を単品で考える背景には、マーケットを深く知らないことや自社目線での開発に偏っているケースが多く見られます。社長やリーダー自らがマーケットに出向き、消費者ニーズや市場の動向を調査し、同じ販売チャンネルに乗せられる商品群としての構想を練ることが重要です。
結論
単品ではなく、複数の商品を組み合わせた「商品群」を形成し、それを市場に投入することが事業の成功には不可欠です。商品群の構築にはマーケット理解が不可欠であり、社長自らが現場に出てマーケットの実情を掴むことが大切です。
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