■ 引用原文（『ダンマパダ』第八章「ことば」第十五偈）
安らぎに達するために、
苦しみを終滅させるために、
仏の説きたまうたおだやかなことばは、
実に善く説かれたことばである。――以上、第八章「ことば」終了。
■ 逐語訳と注釈
- 安らぎに達するために（サンティパッパティヤ）：ニルヴァーナ（涅槃）＝心の静寂と解脱へ向かうために。
- 苦しみを終滅させるために（ドゥッカッサ・ニローダヤ）：人生の苦しみの原因である煩悩と無知を断つ目的で。
- 仏の説かれたおだやかなことば（サンタ・ヴァチャナニ）：怒りや誇張から離れ、慈悲と智慧に満ちた静かな言葉。
- 善く説かれたことば（スッカター・ヴァチャナ）：真理に基づき、聞く者を導く完成された語り。
■ 全体の現代語訳（まとめ）
人々が心の安らぎを得るために、そして人生の苦しみを根本から終わらせるために、
仏が説かれた静かでおだやかな言葉――それこそが、最も優れた、価値ある語りである。
このような語りは、表面的な巧みさではなく、聞く人の魂に深く届き、癒しと目覚めをもたらすものである。
■ 解釈と現代的意義
この偈は、第八章「ことば」の結語にふさわしく、**「語る目的」**に焦点をあてています。
どんなに言葉が巧みであっても、それが人の心を安らげず、苦しみを助長するなら、それは「良い語り」ではありません。
仏が説いた「ことば」は、怒らせず、煽らず、威圧せず、聞く人の心に静けさと方向性を与えるものでした。
現代では、スピードや刺激的な表現ばかりが重視されがちですが、
この偈は私たちに問いかけます――「あなたの言葉は、誰かの苦しみを癒しているか？」
■ ビジネスにおける解釈と適用
| 観点 | 適用例 |
|---|---|
| リーダーの発言 | 指示・叱責・評価であっても、相手を傷つけるのではなく、安らぎと前向きさをもたらす言葉を選ぶ。 |
| 社内文化の形成 | 常に静けさと理性をもって語る文化が、チームの安心感と創造性を引き出す。 |
| 危機対応 | 混乱時においても、感情を煽らず、安定と方向性を与える語りは、組織の支柱となる。 |
| サービス提供者の姿勢 | 顧客に対し、癒しと配慮のある対応をすることで、単なる満足を超えた信頼を獲得する。 |
■ 第八章「ことば」の総括心得
「語ることは、癒しであり、道しるべであり、沈黙を越える智の響きである」
『ダンマパダ』第八章は、言葉に関する仏教的倫理と美徳の凝縮です。
ここでは、以下のような語りの指針が示されました：
- 虚偽を語るな（妄語戒）
- 言行一致の重要性
- 好ましく、優しい語り方
- 誠実で、沈黙に値する語り
- 真実に立脚した言葉こそが不滅である
- 語ることで人の苦を除き、安らぎを与えるべし
■ 感興のことばとしてのまとめ
「言葉は、音ではない。行いであり、徳であり、慈しみである。
語るならば、静けさと真理の橋となれ。」
この章を学ぶことで、私たちは語るときの「重さ」と「目的」を再認識します。
何を言うかよりも、なぜそれを言うのか。誰のために、どのように語るのか。
その問いに答えるような語りこそが、仏の教えにかなう「おだやかなことば」であるのです。
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