目次
■引用原文(日本語訳)
二四
かでも悪いことをしたならば、
つねに来世に苦しみを生じ、
大きな禍を生ずることになる。
毒が腹の中にあるようなものである。
―『ダンマパダ』より
■逐語訳
- かでも悪いことをしたならば:「たとえ少しでも」「軽い気持ちで」行った悪事であっても、
- つねに来世に苦しみを生じ:仏教的視点では、行為の結果は来世にまで及び、苦しみの原因となる。
- 大きな禍を生ずることになる:その小さな悪が、やがて思いもよらぬ大きな不幸を引き起こす。
- 毒が腹の中にあるようなもの:表面では見えず、静かにしかし確実に害をもたらす比喩。
■用語解説
- かでも(些細なことでも):一見取るに足らない、軽微な行為や判断。
- 悪(あく):仏教では、他者や自分を傷つける意図や結果を伴う不善行。意識せずとも行為となりうる。
- 来世(らいせ):死後に続く生命の流れ。ここでは「未来の自分の状態」の象徴でもある。
- 毒:外からは見えにくいが、内面を静かに蝕む破壊的な力。
■全体の現代語訳(まとめ)
たとえほんの小さな悪行であっても、それは未来に確実に苦しみをもたらす。
その害は表には見えずとも、体内に潜む毒のように、やがて大きな禍を引き起こすことになるのだ。
■解釈と現代的意義
この偈は、「軽視された悪がもたらす深刻な結果」に警鐘を鳴らすものです。
私たちは、社会的に許されている、あるいは誰も見ていないからという理由で、「少しぐらいの不正」や「つい口にした悪口」などを軽く見がちです。
しかし、仏教の視点ではそれらの悪もまた、心と行動を侵し、やがて自分自身に大きな不幸をもたらす“内なる毒”となるのです。
見えないからこそ、早く取り除くことが必要です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
倫理判断 | 「このくらい大丈夫」という一度の判断が、やがて重大な法令違反や信用損失に繋がることがある。 |
リスクマネジメント | 初期段階の小さな兆候(数値のずれ、不明確な契約)を放置すると、大きなトラブルを引き起こす。 |
組織文化 | 小さな不誠実を放置する組織風土は、時間とともに毒となって機能不全を招く。 |
個人の成長 | 自分の中の“悪い癖”を「まあいいか」と放置せず、見直しと自省を継続することが重要。 |
■心得まとめ
「些細な悪は、心に宿る毒となる」
目に見えぬからといって、害がないわけではない。
小さな悪も積もれば、心と人生を蝕む毒となる。
――だからこそ、わずかな過ちも見逃さず、今のうちに正してゆくこと。
それが未来の平安を築く最良の薬となるのです。
この偈は「倫理教育」「セルフチェックの重要性」「内部統制」の観点でも活用できます。
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