「賞与」とは、従業員や役員に対して、一定の期間の業績や貢献度に応じて支払われる金銭的報酬を指します。賞与は一般的に、夏季(夏のボーナス)や冬季(冬のボーナス)に支給されることが多く、企業における給与制度の一環として重要な役割を果たします。本記事では、賞与の概要、会計処理、税務上の取り扱い、注意点について詳しく解説します。
賞与とは?
「賞与」は、以下の特徴を持つ報酬形態です:
- 従業員への支給
従業員に対する賞与は、給与の一部として扱われ、労働契約に基づく報酬の一環です。 - 役員への支給
役員賞与は、法人税法上の規定により特別な扱いがされます。原則として損金算入は認められませんが、一定の要件を満たす場合には可能です。 - 業績や評価に応じた支給
賞与は固定額ではなく、業績や評価に基づき支給額が決定されることが一般的です。
賞与の会計処理
- 賞与支払い時の仕訳
賞与を支払う際には、賞与総額を「賞与」勘定に計上し、源泉所得税や社会保険料を控除した後の金額を従業員に支払います。 例:賞与総額500万円、源泉所得税100万円、社会保険料50万円、手取り350万円の場合
借方:賞与 5,000,000円
貸方:預り金(源泉所得税) 1,000,000円
貸方:預り金(社会保険料) 500,000円
貸方:普通預金 3,500,000円
- 賞与引当金の計上(決算時)
賞与を翌期に支払う場合、当期の費用として計上するために「賞与引当金」を計上します。 例:翌期に賞与300万円を支払う場合
借方:賞与 3,000,000円
貸方:賞与引当金 3,000,000円
翌期の支払い時には以下の仕訳を行います:
借方:賞与引当金 3,000,000円
貸方:普通預金 3,000,000円
税務上の取り扱い
- 従業員賞与
従業員への賞与は、法人税法上の損金(経費)として算入可能です。 - 役員賞与
役員への賞与は原則として損金算入が認められません。ただし、事前確定届出給与として事前に税務署へ届け出を行い、一定の条件を満たした場合に限り、損金算入が可能です。 - 源泉所得税の控除
賞与からは源泉所得税を控除し、税務署に納付する必要があります。所得税額は、賞与専用の「賞与の源泉徴収税額表」に基づいて計算します。 - 社会保険料の適用
賞与には厚生年金や健康保険などの社会保険料が課されます。一部は従業員負担分として控除され、企業負担分も別途計上されます。
賞与の仕訳例
- 賞与支払い時の仕訳
借方:賞与 1,000,000円
貸方:預り金(源泉所得税) 200,000円
貸方:預り金(社会保険料) 100,000円
貸方:普通預金 700,000円
- 源泉所得税の納付時
借方:預り金(源泉所得税) 200,000円
貸方:普通預金 200,000円
- 賞与引当金の計上(決算整理仕訳)
借方:賞与 2,000,000円
貸方:賞与引当金 2,000,000円
- 翌期に賞与を支払った場合
借方:賞与引当金 2,000,000円
貸方:普通預金 2,000,000円
賞与の注意点
- 役員賞与の損金算入要件
役員賞与を損金算入する場合は、事前に税務署へ届出を行い、事前確定届出給与として取り扱う必要があります。事前の手続きがない場合、損金算入が認められません。 - 源泉徴収義務
賞与からの源泉所得税や社会保険料の控除・納付を適切に行う必要があります。未納付の場合、延滞税やペナルティが課される可能性があります。 - 賞与引当金の計上基準
賞与引当金は、支給金額が合理的に見積もられる場合に計上可能です。不明確な金額を引当金として計上することはできません。 - 従業員との合意
賞与の金額や支給基準について、従業員と事前に明確に合意しておくことが重要です。
賞与の管理方法
- 給与システムの活用
賞与計算や源泉徴収税額の管理に給与計算ソフトを活用し、正確な処理を行います。 - 社内規定の整備
賞与の支給条件や計算方法を明確に規定し、従業員に周知します。 - 引当金の妥当性の確認
賞与引当金が適正に計上されているか、定期的に確認します。 - 税務申告の対応
賞与支給に関する税務処理が適切に行われているか、税理士と連携してチェックします。
まとめ
「賞与」は、従業員や役員への重要な報酬形態であり、企業の経費の中でも大きな割合を占めます。適切な会計処理を行い、税務上のルールを守ることで、従業員満足度を高めるとともに、税務リスクを軽減できます。役員賞与については特別な取り扱いが必要なため、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
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