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自慢は功績を台なしにし、悔いは罪を清める

どれほど大きな功績も、それを少しでも誇った瞬間に、その価値は崩れ去ってしまう。
一方で、天を覆うような大罪でも、心から悔い改めれば、救われる可能性がある。
つまり、人の真価は、成し遂げた偉業そのものではなく、
それをどう扱い、どう向き合うかにかかっている。
誇りではなく謙虚さを、隠蔽ではなく懺悔を――
それこそが、人の品格を決定づける。


「世(よ)を蓋(おお)うの功労(こうろう)も、一個(いっこ)の矜(きょう)の字(じ)に当(あ)たり得(え)ず。
天(てん)に弥(わた)るの罪過(ざいか)も、一個の悔(かい)の字に当たり得ず。」


注釈:

  • 世を蓋う(よをおおう)…世間に知れ渡るほど大きな業績や功績。名声を伴う偉業。
  • 矜(きょう)…誇ること。自慢。慢心して他人より優れていると思う心。
  • 天に弥る(てんにわたる)…天地に及ぶほど大きな罪。非常に重い過ち。
  • 悔(かい)…心からの悔い改め。後悔と反省の気持ち。
  • 当たり得ず(あたりえず)…耐えられない、打ち消されてしまう、という意味。価値や重みが失われること。

1. 原文:

蓋世功勞、當不得一個矜字。
彌天罪過、當不得一個悔字。


2. 書き下し文:

世を蓋(おお)うの功労も、一個の矜(きょう)の字に当たり得ず。
天に弥(わた)るの罪過も、一個の悔(かい)の字に当たり得ず。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ):

  • 「世を蓋うの功労も、一個の矜の字に当たり得ず」
     → 世の中を覆い尽くすほどの偉大な功績があっても、「誇り高ぶる心(矜)」があれば、その価値は失われてしまう。
  • 「天に弥るの罪過も、一個の悔の字に当たり得ず」
     → 天に届くほどの大きな罪であっても、「悔い改める心(悔)」があれば、償われるのである。

4. 用語解説:

  • 蓋世(がいせい):世を覆う、圧倒的な、非常に大きな(功績や能力の形容)。
  • 功労(こうろう):社会や他人のために尽くした手柄・功績。
  • 矜(きょう):自らの能力や功績を誇ること、傲慢さ・自負。
  • 彌天(びてん):空に満ちるほど大きい。弥天の罪=極めて大きな罪。
  • 悔(かい):悔やむこと、反省と謝罪の心。

5. 全体の現代語訳(まとめ):

どれほど大きな功績を挙げたとしても、そこに慢心や誇りがあれば、すべては台無しになる。
反対に、どれほど大きな罪を犯したとしても、心からの反省と悔いがあれば、そこに救いがある。


6. 解釈と現代的意義:

この章句は、**「誇りは功績を損ない、悔いは罪を癒やす」**という、心の持ち方による価値の転換を説いています。

社会では、実績や成果を誇示することが評価される場面もありますが、
この章句は、それが慢心や傲慢につながるならば、その功績の価値は根本から損なわれると警告しています。

また、一度過ちを犯したとしても、心から悔い改めることができれば、人間として再出発できるという「寛容」と「再生」の倫理も含まれています。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き):

  • 「成果を誇るな、成果は姿勢に宿る」
     大きな成功を収めても、それを鼻にかけると周囲の信頼を失い、継続的な支持は得られない。
     「謙虚な成功者」は組織に安心感と尊敬をもたらす。
  • 「過ちを認め、謝罪できる人が信頼される」
     ミスや失敗があっても、素直に悔い、謝罪し、再発防止に努める姿勢が、真の信頼と信用を育む。
     「謝れる人が、リーダーにふさわしい」と言われるのはこのため。
  • 「功績は謙虚さと、失敗は悔いで支えよ」
     長期的なキャリアは、誠実さと内省力によって磨かれていく。
     “功を誇らず、過ちを悔ゆ”という姿勢は、信頼される人物の条件である。

8. ビジネス用の心得タイトル:

「誇らず悔ゆる心が、人を真に高める──功績も失敗も“心”が決める価値」


この章句は、リーダーシップや人間関係における「真の謙虚さと悔いの力」を、簡潔ながら深く説いています。

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