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口から出る刃に気づけ


■ 引用原文(『ダンマパダ』第八章「ことば」第二偈)

人が生れたときには、実に口の中に斧が生じている。
ひとは悪口を語って、その斧によって自分自身を斬るのである。


■ 逐語訳

  • 人が生れたときには:すべての人間はこの世に生を受けたときから。
  • 実に口の中に斧が生じている:言葉には鋭い破壊力があり、それが人間の口に備わっている。
  • 悪口を語って:他人を傷つけたり害する意図をもって発言すること。
  • その斧によって自分自身を斬る:悪口を言うことで、自分の徳を傷つけ、結果的に自分が損なわれる。

■ 用語解説

  • 斧(おの):破壊や傷つける象徴として使われた比喩。言葉の破壊力を表現。
  • 悪口(あっく/あっこう):人を非難・誹謗・侮辱する言語行為。仏教では重大な「口の悪業」のひとつ。
  • 自分自身を斬る:悪行によるカルマ(業)は最終的に自分に返ってくるという因果応報の教え。

■ 全体の現代語訳(まとめ)

人は生まれながらに、口の中に「斧」を持っている。その斧とは言葉である。もしもそれをもって他人を傷つけるような悪口を語れば、その刃は他者だけでなく、自分自身を深く傷つけてしまうのだ――仏陀はそう戒めている。


■ 解釈と現代的意義

この偈は、言葉の持つ「破壊力」に対する深い洞察を表しています。人間は無意識に、あるいは感情に任せて放った言葉で、他者を傷つけると同時に、自らの人格・信用・徳までをも傷つけてしまいます。これは単なる倫理の教えではなく、「言葉=業(カルマ)」としての仏教的リアリズムです。

SNSやメール、チャットなど、気軽に言葉を発信できる現代において、言葉の「刃」はますます鋭くなっています。だからこそ、この偈の教えは今こそ重要です。


■ ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
対人コミュニケーション批判や皮肉を言えば一時的には優位に立てても、信頼や協調は損なわれ、結局は自分に跳ね返る。
組織運営社内での陰口・悪口文化はチームの士気と生産性を下げ、発言者自身の評価を下げる原因になる。
クレーム対応感情的な言葉で応じると、会社の信用も本人の立場も危うくなる。冷静で敬意ある対応が結果的に最善。
リーダーの資質部下のミスを非難するだけのリーダーは、恐怖で動かすが、尊敬を失い、最終的には孤立する。

■ 心得まとめ

「刃は手に持たずとも、口の中にある。語るたびに心せよ」

仏陀は私たちに、生まれながらに「言葉という武器」を持っていることを自覚せよと説いています。
その武器を振るえば、相手だけでなく、自らの心と人生をも傷つけることになる――この認識が誠実な人間関係の第一歩です。
ビジネスにおいても、「言葉の使い方」は最大の信頼資産です。慎み、丁寧さ、敬意をもって発した言葉こそが、自他を守り、高める力となります。


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