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📖 引用原文(『ダンマパダ』第33章「バラモン」第26偈)
彼岸もなく、
此岸もなく、
彼岸・此岸という区別そのものもなく、
三界(欲界・色界・無色界)に対する執着を離れた人――かれを、われは〈バラモン〉と呼ぶ。
――『ダンマパダ』第33章 第26偈
🔍 逐語訳(意訳)
彼岸(涅槃)にも、此岸(迷いの世界)にもとどまらず、
その両方を区別するという発想さえ超え、
さらに三界(全宇宙的存在領域)にも何ら執着していない人――
その人こそ、仏陀が認める〈バラモン〉である。
🧘♂️ 用語解説
- 彼岸(パーラ)/此岸(イーマム):迷いと悟りの対比構造。此岸=煩悩の世界、彼岸=悟りや涅槃。
- 三界(ティローカ):仏教の世界観における三つの存在領域。
- 欲界:欲望に支配された人間・動物・天界の世界。
- 色界:物質はあるが欲は超越された瞑想の世界。
- 無色界:物質すら超えた純粋精神の世界。
- 執著(ウパーダーナ):執着・取り込み・固執。三界を「よいもの」「あるべきもの」と見る心の働き。
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
悟りの世界にも、迷いの世界にもとどまらず、
そもそも「悟り vs. 迷い」という対立を超えている。
さらに、宇宙のあらゆる存在形態――
欲望の世界・瞑想の世界・精神のみの世界にさえ興味を抱かず、
どこにも心をとどめない者――それが真の〈バラモン〉である。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、存在そのものへの執着からの完全な自由を表しています。
仏教では、「悟り」すら執着となる場合があるとされます。
また、高尚な境地(例:色界・無色界)であっても、
それを「良いもの」として追い求める限り、そこには心のとらわれ=煩悩が存在します。
この偈は、存在・非存在・理想・恐れ・安心感といった心の居場所をすべて手放した境地を、「完全なる自由」として示しています。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
成果や肩書への無執着 | 「昇進」「報酬」「達成」などへのとらわれを手放すことで、自由で本質的な行動が可能になる。 |
過去/未来/理想像への執着からの脱却 | 「前はこうだった」「いつかこうなりたい」という思考に縛られず、「今、ここ」でベストを尽くす姿勢が本質的。 |
精神的コンフォートゾーンの超克 | 高い地位や安定の中にいても、それに依存せず、自分の成長や真理のために動き続ける力。 |
ゼロベース思考 | あらゆる既存の枠組み・前提・価値判断を疑い、真に新しい発想を生む姿勢。 |
💡 感興のことば:心得まとめ
「とらわれるべき世界など、最初からどこにもない」
迷いの世界にも、悟りの世界にも、
執着してはならない。
そのような人こそ、**ほんとうの意味で「超えた存在」**なのである。
仏陀は、そうした「すべてを超えた無執着の人」を、
〈バラモン〉と呼びました。
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