目次
📖引用原文(日本語訳)
第二六*
水も無く、地も無く、火も風も侵入しないところ、
そこには白い光も輝かず、
暗黒も存在しない。
🔍逐語解釈と用語の意味
表現 | 解釈 |
---|---|
水・地・火・風 | 古代インド哲学での「五大(地・水・火・風・空)」のうちの四要素。物質を構成する根本的な存在。 |
侵入しないところ | 五大を含むいかなる構造も届かない場所。つまり物質的存在の限界を超えた領域。 |
白い光 | 覚醒・智慧・清らかさの象徴。 |
暗黒 | 無知・煩悩・混乱・死の象徴。 |
それすら存在しない場所 | 光(善)と闇(悪)の二元性そのものが超越された、絶対的中立の境地。 |
🧘♂️全体の現代語訳(まとめ)
そこには、
水もなく、大地もなく、火も風も入り込むことができない。
つまり、一切の物質的構造が消えた世界である。
さらに、
そこでは白い光(知・善)すら輝かず、
暗黒(無知・悪)すら存在しない――
あらゆる分別・対立・現象を超越した“無二の静寂”の境地が、そこにある。
💡解釈と現代的意義
この句は、「ニルヴァーナとは何か?」という問いに、
**“何もない”ではなく、“すべてが超越された場所”**としての回答を提示しています。
🌀 二元性の限界を超える
光と闇。善と悪。物質と精神。成功と失敗。
私たちは常に、**「相反する二つの間で揺れ動く」**存在です。
しかし仏教では、その対立構造自体が苦しみの原因だとします。
この句が指し示すのは、そうした二項対立(dualism)の彼岸――
それは「良い」とも「悪い」とも言えず、
「ある」とも「ない」とも言えない、
ただ“静かに、無言に、在る”という世界です。
💼ビジネスにおける適用
観点 | 適用内容 |
---|---|
判断の手放し | 成功・失敗、善・悪といった極端な判断軸を手放し、冷静に物事を見極める力を養う。 |
物質・感覚への執着を超える | ブランド・数字・賞賛など、外部的な要素に依存しない働き方=“内なる軸”で働く姿勢。 |
白黒をつけない余白の力 | すぐに結論を出さず、“光でも闇でもない場所”に一度留まる思考の余白が、創造性を生む。 |
変化を超越するリーダー像 | 外界の変動(風・火)や構造(地・水)に揺さぶられず、変化の波を静かに超える姿勢。 |
✅心得まとめ
「光にも依らず、闇にも沈まず――そこにこそ、動じぬ心は育つ」
すべての構造が解け落ちたとき、
そこに残るのは、何者にも染まらない静寂。
白か黒か、正か誤かにとらわれずに、
ただ今この瞬間を、まなじりを下げて観る勇気を持つ――
それが、「苦しみの終滅」に至る心の姿なのです。
この句は、仏教的世界観の終着点を詠む、
最終的な「無依・無生・無形」のニルヴァーナ観を象徴する詩句です。
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