目次
■引用原文(日本語訳)
しかし、〔行為の〕放擲*は、〔行為の〕ヨーガなしでは達成され難い。〔行為の〕ヨーガに専心した聖者は、遠からずブラフマンに達する。
(第5章 第6節)
*放擲(ほうてき):行為そのものを手放す生き方。サンニャーサの道。
■逐語訳
行為の放棄(サンニャーサ)は、行為のヨーガ(カルマ・ヨーガ)なくしては達成されがたい。ヨーガに専念する賢者は、やがて最高の実在(ブラフマン)に到達するであろう。
■用語解説
- 放擲(サンニャーサ):物質的・社会的な行為や責任をすべて捨て去ること。ただし、内面的に執着を断つという意味が強調される。
- ヨーガ(カルマ・ヨーガ):行為を行いつつも、その結果に執着せず、心を浄化していく修行の道。
- ブラフマン:宇宙の根本原理。全存在の根源。到達すべき究極の境地。
- 専心した聖者(ユクタ・ムニ):精神統一と行為のヨーガを通じて、智慧と実践を深めた者。
■全体の現代語訳(まとめ)
行為の完全な放棄は、単に何もしないことではなく、まず「行為を通じて心を浄化する」という過程を経なければ到達できない。無執着の行為を積み重ねた人は、やがて宇宙の真理(ブラフマン)に至る。
■解釈と現代的意義
この節は、「何もしないことが悟りではない」というギーターの核心を語っています。精神的な自由に至るためには、まず現実の中で行為を通して訓練を積む必要があります。いきなり“手放す”ことはできません。自我や欲望を行動の中で浄化していく過程こそが、最終的な自由(放棄)への道なのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
キャリア形成 | いきなり高みに達しようとせず、日々の実践と積み重ねを通して成長を目指す姿勢が重要。 |
リーダーシップ | 最終的に「任せる・手放す」ことを理想とするならば、そのためには「徹底して関わる」経験が必要。 |
マインドセット | 「今の行動が、未来の自由をつくる」――淡々と実行する中で、自然に執着が減り、本質が見えてくる。 |
目標達成 | 最終目標(自由、完成、手放し)を急ぐのではなく、プロセスに身を委ね、実践の中で段階的に到達する。 |
■心得まとめ
「高みを目指すならば、まず足元の一歩を誠実に踏み出せ」
真の放棄とは、何もせずに得られるものではない。むしろ、やるべきことを執着なくやり抜いた人にこそ、自然と手放す力が備わる。ビジネスでも人生でも、理想を実現する鍵は、「現実を誠実に生きる実践」の中にあります。
コメント