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■原文(第11章 第33節)
「それ故、立ち上れ。名声を得よ。
敵を征服して、繁栄する王国を享受せよ。
彼らはまさに私によって、前もって殺されているのだ。
あなたは単なる機会(道具)となれ。アルジュナ。」
■逐語訳(一文ずつ訳す)
- それゆえに、立ち上がれ。名声を得よ。
(tasmāt tvam uttiṣhṭha yaśho labhasva) - 敵を打ち破り、栄える王国を享受せよ。
(jitvā śhatrūn bhuṅkṣhva rājyaṁ samṛiddham) - 実のところ、彼らは私によってすでに殺されているのだ。
(mayaivaite nihatāḥ pūrvam eva) - あなたはただの機会(nimitta-mātram)であれ、アルジュナよ。
(nimitta-mātraṁ bhava savya-sāchin)
■用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
名声(yaśas) | 世に残る名誉、名声。正義に則った戦いの結果として得られるもの。 |
繁栄する王国 | 豊かで安定した支配領域。戦いを正しく行うことで与えられる報酬の象徴。 |
nimitta-mātra | 「単なる道具・手段」。神の意志を実現するための媒介としての人間。 |
savya-sāchin | アルジュナの別称。「両手で弓を操る名手」の意。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
だから、アルジュナよ、立ち上がりなさい。
名声を得て、敵を打ち破り、繁栄する王国を受け取るのです。
敵はすでに、私の手によって滅ぼされているのだから。
あなたはただ、その運命を実現するための“道具”になればよいのです。
■解釈と現代的意義
この節は、「行為者としての自我を放棄し、天の意志に従え」というバガヴァッド・ギーターの核心思想を明確に示しています。
- 成功も失敗も神の領域にある。人間はその過程を担う道具にすぎない。
- 「自分が何かを成し遂げる」と思うことこそが執着であり、それが苦の原因となる。
このようにして、アルジュナに「結果に縛られない行為」を促しつつも、具体的な戦いへの参加を命じているのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
プロジェクトリーダーとしての心構え | 成果は組織・市場・運により左右される。自分は流れを生む“触媒”として全力を尽くせばよい。 |
経営判断における決断力 | 「やるべきこと」を見極めたら、恐れずに断行せよ。結果は後からついてくる。 |
成果への執着からの脱却 | 利益・地位・称賛に縛られず、信念や価値に従って淡々と行動する者が、結果的に信頼され続ける。 |
■心得まとめ
「汝は機会(ツール)に徹せよ」
成功や失敗、勝利や敗北――
それらの大半は自分の力を超えたところにある。
だからこそ、自分の役割に誠実に向き合い、
「この身を、正義の実現のための道具」として使い切る勇気を持て。
結果は天に任せよ。汝はただ、
最善を尽くす“触媒”となればよい。
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