孔子は、人格のバランスについて非常に的確な言葉でこう語った。
「人の実質が外見よりも勝ちすぎると、洗練を欠いた田舎者のようになってしまう。
逆に、見かけの飾りが中身に勝ちすぎると、ただの文書係のように軽薄に見えてしまう。
だが、外見と中身の両方が美しく整っているとき、そこにはじめて“君子”があらわれるのだ」
これは、中身だけでも、見た目だけでも不十分であるという教えであり、どちらかに偏ることの危うさを説いている。
「質」とは人の誠実さ・実直さ・徳のこと、「文」とは礼儀・態度・言葉遣いや外見の整えなど、見える部分の美しさを指す。
現代においても、学びや能力に秀でながらも人との接し方が粗野だったり、逆に洗練された外見の裏に空虚な内面しかなかったりする人を私たちは見かける。
本当の“君子”とは、内に深い教養と誠実さを持ち、外に礼儀と美しさをまとった人物である。
ふりがな付き原文
子(し)曰(いわ)く、
質(しつ)、文(ぶん)に勝(まさ)れば則(すなわ)ち野(や)なり。
文(ぶん)、質(しつ)に勝(まさ)れば則ち史(し)なり。
文質(ぶんしつ)彬彬(ひんぴん)として、然(しか)る後(のち)に君子(くんし)なり。
注釈
- 質(しつ):人の中身、実質、徳、誠実さなど。
- 文(ぶん):外見、礼儀、言葉づかい、態度など表面的な部分。
- 野(や):粗野な人、洗練されていない田舎者のイメージ。
- 史(し):文書係、表面だけ整った中身のない役人。
- 彬彬(ひんぴん):中身と外見の調和がとれて整っている様子。
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