指導的立場にある者、すなわち士君子は、自分を軽く扱ってはならない。
軽々しい言動は、外部の出来事に心を振り回され、落ち着いた風格を失わせる。
しかしその一方で、あまりに構えすぎ、慎重になりすぎてもいけない。
重苦しさは、外のものへの過度な反応を生み出し、柔らかく素直な活力を奪ってしまう。
重すぎず、軽すぎず。
堂々と落ち着きながらも、しなやかで活発な心を保つ――
それが真のリーダーに求められる「品」と「器」である。
原文(ふりがな付き)
士君子(しくんし)、身(み)を持(じ)するは軽(かる)くすべからず。軽くすれば則(すなわ)ち物(もの)能(よ)く我(われ)を撓(たわ)めて、悠閒(ゆうかん)鎮定(ちんてい)の趣(おもむき)無し。意(い)を用(もち)うるは重(おも)くすべからず。重くすれば則ち我、物の為に泥(なず)みて、瀟洒(しょうしゃ)活潑(かっぱつ)の機(き)無し。
注釈
- 士君子(し・くんし):学識・人格に優れ、社会的にも模範とされる人物。ここでは「リーダー」や「指導的立場にある人」を指す。
- 軽くすべからず:言動が軽薄であってはならないという戒め。
- 物能く我を撓めて:周囲の状況や他人の言動に影響され、心が揺れてしまう状態。
- 悠閒鎮定の趣(ゆうかんちんていのおもむき):余裕があり、落ち着いた風格やたたずまい。
- 意を用うるは重くすべからず:考えすぎたり、深刻になりすぎたりしてはならないという教え。
- 瀟洒活潑(しょうしゃかっぱつ):しなやかで爽やか、かつ生き生きとした心のはたらき。内から自然ににじみ出る明るさや元気。
パーマリンク(英語スラッグ)
balance-in-leadership
(リーダーの中庸)calm-and-lively
(落ち着きと活気)poise-with-vitality
(風格と活力を兼ねる)
この条文は、指導者や上に立つ者が陥りやすい「軽さ」と「重さ」の両極を戒め、中庸の徳を教えてくれます。落ち着きすぎて硬直せず、明るく振る舞っても軽薄にならないこと――それが人を動かす真の魅力であり、影響力です。
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