企業が費用増加にばかり注目し、収益増加を見落とす例は多く、こうした場合は増分計算が有効です。ここでは、費用増加のみに焦点を当てた例を以下にまとめました。
目次
1. 在庫をつくりだめしない理由:費用増加の懸念
K社のケースでは、閑散期に在庫を増やすことで生じる金利や保管料、運賃、損耗といった費用が懸念されていました。具体的には、次のような増分費用が見込まれました。
- 金利負担:増分在庫5,000万円に対し、金利が84万円(1.6%)
- 保管料:年間144万円
- 運賃:100万円
- 損耗:150万円
合計478万円の費用増加が見込まれたため、経理部門は在庫増加に反対していました。
2. 在庫の金利負担を恐れて売損じが発生
T社は文房具問屋で、大手K社の現金仕入れによる金利負担を恐れ、在庫を少なく抑えていました。増分計算を行うと、次のような金利負担増が見積もられました。
- 増分在庫金利負担:年間で14か月分の金利増、約82万円
金利負担のみを重視するあまり、在庫を増やさず、結果として機会損失が生じていました。
3. コストアップで収益増加を見落とす
S社では、ブロイラー配送に保冷車を導入するとドライアイス代で1日2万円かかるため、鮮度改善による売上増を期待しながらも、コストアップだけを懸念して踏み切れずにいました。
- 保冷車のドライアイス費用:1日あたり2万円のコスト増加
まとめ
このように、費用が増えることだけに注目して収益増加を見落とすと、重要な成長機会を逃してしまうことがわかります。
増分計算によって収益と費用のバランスを同時に検討し、経営判断を最適化することが重要です。
コメント