一方の話だけを鵜呑みにして、悪賢い者の策略に踊らされてはならない。
自分の力にうぬぼれて、自信過剰のまま突き進んでもいけない。
自分の得意を誇って、他人の弱点をさらけ出すようなことをしてはいけない。
自分が不得意だからといって、他人の才能をねたみ、排除しようとしてはならない。
公平な目、謙虚な心、他者への敬意。
これらがそろってこそ、真に成熟した人格となる。
自己中心の視野を捨て、バランスの取れた判断こそが、人との関係を清く保つ鍵である。
原文(ふりがな付き)
偏信(へんしん)して奸(かん)の欺(あざむ)く所(ところ)と為(な)ること毋(なか)れ。自任(じにん)して気(き)の使(つか)う所と為る毋れ。己(おのれ)の長(ちょう)を以(もっ)て人(ひと)の短(たん)を形(あら)わすこと毋れ。己の拙(せつ)に因(よ)りて人の能(のう)を忌(い)むこと毋れ。
注釈
- 偏信(へんしん):一方的に信じること。客観的に物事を見られず、人の言葉や態度を片面だけで判断すること。
- 奸(かん):ずる賢く、計略をめぐらせる人。人を利用する者。
- 自任(じにん):自分の能力や判断力にうぬぼれ、過信すること。
- 気の使う所と為る:勢いにまかせて行動し、自分も周囲も疲弊させること。
- 己の長を以て人の短を形す:自分の得意を見せつけることで、他人の不得意をさらけ出すような態度。
- 己の拙に因りて人の能を忌む:自分が不得意であることを理由に、他人の才能をねたんだり嫌ったりすること。
パーマリンク(英語スラッグ)
balance-before-belief
(信じる前に見極めを)humility-in-strength
(強みの中に謙虚さを)envy-no-talent
(他人の才能をねたまない)
この条文は、他者への見方と自分の在り方の両面に慎みを求めるものです。
片面だけの情報で動く愚かさ、うぬぼれからくる失敗、そして妬みによる心の汚れ――
そうした人間の弱さに対する深い警告が込められています。
自分の強さに安住せず、他人の良さを素直に認め、バランスある思考を保つこと。
それこそが、真に信頼される人の資質です。
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