企業の経営において、数字は非常に重要な指標となります。しかし、P/L(損益計算書)の数字にだけ注目し、B/S(貸借対照表)の重要性を見落としてしまう経営者は少なくありません。B/Sは会社の現実を映し出す鏡であり、現金の流れや資金調達の実態を把握するための不可欠なツールです。本記事では、B/Sを活用して会社の現実を把握し、意図的に調整することで経営を改善する方法について解説します。
B/Sが示す会社の現実
会社の現実を理解するには、B/S(貸借対照表)を読むことが欠かせません。しかし、多くの経営者は「勘定項目が分からない」という理由で、B/Sの詳細な数字を見ようとしません。一方で、P/L(損益計算書)の数字は日々の業務で使われるため、わかりやすく、これだけを頼りに経営の安定を判断してしまう傾向があります。
実際には、P/Lが示す利益は「見解」に過ぎません。本当に重要なのは現金です。P/L上で経常利益が出ていても、現金が不足していれば倒産のリスクがあります。逆に、赤字であっても現金が回っていれば倒産を回避できます。つまり、会社の現実はB/Sを見なければ把握できません。
B/Sを中心とした経営指導
私がこれまで500社以上に経営指導を行い、一社も倒産させなかった理由は、B/Sを中心にした指導を行ったからです。B/Sを基に、長期的な資金調達や短期的な運用計画を立てることで、事業構造を見直し、現金が回る仕組みを構築する重要性を伝えてきました。
例えば、B/Sから「売掛金や在庫が増加している場合、現金化に時間がかかる」という事実が見えてきます。この状況を改善するために、「経常利益を増やす」「設備投資を抑える」といった具体的な社長の決断が必要になります。
P/Lは過去、B/Sは現在
P/Lが過去の結果を示すものであるのに対し、B/Sは現在の状況を示します。B/Sの数字は、社長の意思次第で変えることができます。たとえば、定期預金を増やす、借入金を増やす、または減らすといった具体的な戦略を立てることが可能です。
どの勘定項目をどの程度持つかを決めることで、経営戦略全体が形成されます。これにより、会社の資金繰りや将来的な投資計画が明確になります。
銀行からの評価を上げるB/Sの運用
銀行は、B/Sを見て企業の信用力を判断し、融資の可否を決めます。B/Sの右側にある「負債および純資産の部」には、支払手形や買掛金、未払金などの項目が並んでいます。これらは「資金をどこから調達したか」を示しており、調達しやすい順に並んでいます。
一方、左側の「資産の部」には、現金や普通預金、売掛金、棚卸資産など「資金がどのような資産に変わったか」を示す項目が並び、現金化しやすい順に配置されています。資産の中で現金や流動資産の割合を増やし、負債では長期借入金を増やすことで、銀行からの評価を高めることができます。
勘定項目の操作がもたらす影響
B/Sを意図的に調整することで、銀行からの格付けを向上させることが可能です。資産の部では、流動資産を増やす、負債の部では長期借入金や資本金の比率を上げるといった工夫が必要です。これにより、銀行から見た信用度が上がり、より有利な条件で資金調達が可能になります。
まとめ
B/Sは、会社の現実を正確に映し出す指標です。P/Lだけでは見えない現金の流れや資金の使い道を明らかにすることで、経営戦略を具体化することができます。社長がB/Sを正しく理解し、勘定項目を意図的に操作することで、企業の信用力を高め、持続的な成長を実現することが可能です。
B/Sの中身は変えられる
会社の現実は「B/S」を見なければわからない
多くの社長が「勘定項目がわからない」という理由でB/Sの数字を見ようとしません。
一方で売上や仕入、給料といったP/Lの数字は、日頃から使っているため、わかりやすいから、P/Lの数字だけを見て「経常利益が出ているし我が社は大丈夫だ」と安心してしまう社長が実に多い。
繰り返しになりますが、利益は見解に過ぎません。現実は現金です。経常利益が出ていても現金がなければ倒産するし、赤字でもお金が回っていれば倒産しません。
P/Lを見たところで、会社の現実(=現金がどれだけあるか)はわかりません。会社の現実は、すべてB/Sに記されています。
小山昇が11年間、のべ500社以上に経営指導をしてきて1社も倒産していないのは、B/Sを中心に指導しているからです。
B/Sをベースに「長期的にどのようにお金を調達し、どのように使うか、売掛金や在庫など、短期的にお金が必要なものをどのようにまかなうか」を計画すると、「事業構造を変えていかないと、現金が回らない」ことがわかります。
そしてこの計画を達成するためには、「経常利益を増やさないといけない」あるいは「設備投資をやめよう」といった「社長の決定」が明確になります。
P/Lは「過去の結果」で変えようがありません。しかしB/Sは「現時点の状況を示す数字」であり、「社長の意思」でかえることができます。
どの「勘定科目の数字を、どれだけ持つか」によって、経営戦略が決まります。
私は意図的に「定期預金を増やす」とか「借入金を増やす」、「借入金を減らす」と決めています。
銀行は「B/Sの中身」を見てお金を貸す
B/Sの右側の「負債および純資産の部」には、支払手形、買掛金、経費未払金など、「資金をどこから、いくら調達したか」についての勘定科目が並んでいます。
この順番は「資金を調達しやすい順番」です。
銀行からいくら借りるのか、支払い手形を発行するのか、内部留保と当期の経常利益以外は、社長の意思で決めることができます。
左側の「資産の部」には、現金、普通預金、固定預金、受取手型、売掛金、棚卸資産など、「集めたお金がどんな資産に変わったか」についての勘定科目が並んでいます。
この順番は、「現金化しやすい順番」です。現金をいくら持つのか、預金はいくらにするのか、土地は所有するのか借りるのかは、社長の意思できめることができます。
資金の調達額や資産の額が同じでも「勘定科目の取り方」を変えると、銀行からの財務評価(格付け)が変わります。
銀行はB/Sを見てお金を貸すので、銀行からの信頼を得るには、少しでも借入が有利になるようにB/Sの中身を意図的に変えて、格付けを上げた方がいい。
勘定項目の取り方を変えると、銀行の格付けも変わる
資金運用とは、意図的にB/Sの勘定科目を変えることです。資金繰りが苦しいのは、それは社長が、「B/Sの数字の取り方」を決めていないからです。
ではB/Sをどのように変えれば、銀行からの評価が上がるのか。銀行の格付けを上げるには、
資産は、固定資産(土地や建物など)よりも流動資産(受取手形、固定預金、現金など)が多いと銀行の格付けは上がります。なぜなら、現金化しやすい科目が多いほど、資金を回収しやすいからです。
負債は、資金を調達しにくい下位科目の数字が大きい方が、格付けは上がります。支払手形や買掛金よりも長期借入金が多い方が、信用力が高いとみなされます。資本金と内部留保が多いのが一番です。業種によっては決算期を変えると格付けが変わります。
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