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■引用原文(日本語訳)
もろもろの聖者に会うのは善いことである。かれらと共に住むのはつねに楽しい。愚かなる者どもに会わないならば、心はつねに楽しいであろう。
― 『ダンマパダ』 第十五章「楽しみ」 第206偈
■逐語訳
- 聖者に会うのは善いことである:道徳・智慧・慈悲を備えた人物と出会うことは、人生にとって最も有益である。
- かれらと共に住むのはつねに楽しい:高潔な人々とともに過ごすことで、精神は自然と調和と喜びを得る。
- 愚かなる者どもに会わないならば:無知・我欲・軽薄な行いに満ちた人々と交わらないことができるならば、
- 心はつねに楽しいであろう:内面的な苦しみから解放され、穏やかで楽しい心が保たれる。
■用語解説
- 聖者(アーリヤ/善知識):戒律を守り、智慧と慈悲をもって生きる覚者、導き手、師。
- 愚者(バーラ):道理をわきまえず、欲や怒りに支配され、軽薄に生きる者。単に知識の有無ではなく、心の成熟度を指す。
- 楽しい(スッカ):心の安定、穏やかさ、精神的な満足。外的刺激とは異なる内的な幸福。
■全体現代語訳(まとめ)
真に尊敬すべき人物(聖者)と出会うことは、大きな恩恵である。
そのような人物と共に過ごせば、自然と心は和らぎ、満ち足りた気持ちになる。
反対に、欲望や無知に支配された人々(愚者)と交わることを避けられれば、
心はいつも穏やかで、深い楽しみを得られるだろう。
■解釈と現代的意義
この偈は、交友関係や人間関係の選び方が、人生の質そのものを左右することを示しています。
現代でも、「誰と付き合うか」は精神状態に多大な影響を与えます。
聡明で誠実な人との対話や時間は心を高めますが、軽薄で利己的な人々との接触は疲弊を生み、自己喪失を引き起こします。
仏教では「善知識と共にあること」が修行と智慧の鍵とされており、この偈はその教えを端的に表現しています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・応用例 |
---|---|
人間関係と職場環境 | 倫理的で誠実な人と仕事をすることで、安心感とやる気が生まれる。反対に利己的・批判的な人との関係は心を疲弊させる。 |
メンターシップと成長 | 本物の知見と人格を持つ人(聖者)に学ぶことは、キャリアと人格形成における最良の投資である。 |
採用・チームビルディング | スキルだけでなく、精神性や誠実さを重視して人を選ぶことで、組織全体が安定し、健全になる。 |
自律性の確保 | 愚者に引きずられず、自らの行動と心の平穏を守る力を持つことが、ビジネスにおける成熟と信頼に繋がる。 |
■心得まとめ(ビジネス視点)
「誰と共にあるかが、どう生きるかを決める」
知識や肩書ではなく、智慧と誠実さを持つ人と共にあろう。
そのような出会いは、人生と仕事に深い意義と穏やかさをもたらしてくれる。
一方で、批判や欲望にまみれた人間関係からは、自らを守る勇気を持とう。
ブッダのこの教えは、「人とどう関わるか」が、「どんな人生を築くか」に直結することを私たちに静かに教えてくれているのです。
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