学びにおいて大切なのは、まず正統の道・基本をしっかりと身につけること。
流行や奇をてらった考え方にばかり目を奪われ、基礎をおろそかにすれば、学びはかえって害となる。
目新しさや人目を引く理屈に飛びつくのではなく、地道に本道を歩む姿勢が、本物の力をつくる。
知識は飾りではない。奇を好み、基礎を軽んじる者に、真の理解は訪れない。
原文:
「子曰、攻乎異端、斯害也已。」
書き下し文:
「子(し)曰(いわ)く、異端(いたん)を攻(おさ)むるは、斯(こ)れ害(がい)あるのみ。」
現代語訳(逐語/一文ずつ訳):
- 「子曰く」
→ 孔子は言った。 - 「異端を攻むるは」
→ 正統から外れた思想・学問(異端)を学び、熱心に追求することは、 - 「斯れ害あるのみ」
→ ただ害があるだけだ(=有益なことは何もない)。
用語解説:
- 異端(いたん):孔子が理想とした儒教的道徳・礼法から外れた思想や教え。迷信・奇説・神秘思想・過度な技巧など。
- 攻むる(おさむる):深く学ぶ、探究する。
- 斯れ(これ)…のみ:これはまさに~だけである、という強調表現。
- 害(がい):心や行動にとっての悪影響、有害な結果。
全体の現代語訳(まとめ):
孔子はこう言った:
「正道から外れた思想を深く学ぼうとすることは、ただ害をもたらすだけである。」
解釈と現代的意義:
この章句は、「学びには節度と軸が必要であり、正しい道を踏み外す学問には注意せよ」という孔子の警告です。
- 孔子は学問を非常に重視しましたが、本質から逸れた“技巧に偏った知識”や“怪しげな思想”に耽ることには明確に反対していました。
- 知的好奇心は大切である一方、倫理や礼を伴わない学問は、むしろ人格や判断力を損なう可能性があると考えられていたのです。
- 学ぶ内容には「正しい方向性と目的意識」が必要であり、実践と徳につながらない知識の追求は害になるという教訓でもあります。
ビジネスにおける解釈と適用:
- 「本筋から外れた知識・情報に注意」
- トレンドや流行のノウハウに飛びつく前に、自社の理念や戦略と合っているかを見極めることが重要。
- “斬新な理論”が魅力的に見えても、検証されていない情報や倫理に欠ける手法は長期的に害となる。
- 「原理原則を大切にする」
- 経営やマネジメントでも、古典的な「誠実・責任・継続・信頼」といった基本的な価値観から外れるやり方は避けるべき。
- 技術やツールに頼りすぎて「何のためにやっているのか」を見失うと、本末転倒になる。
- 「学びにおける“選球眼”を養う」
- 情報があふれる時代だからこそ、どの知識を学ぶか、何に時間を使うかを見極める力が問われる。
- 学問も研修も、「成果と倫理に結びつくか?」という視点が重要。
ビジネス用心得タイトル:
「知の探求は“道”を見失うな──本質から逸れた学びは害を生む」
この章句は、「すべての知識が善ではない。正道から外れた探求は危うい」という、知識社会に生きる現代人への普遍的な警鐘です。
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