implex1023– Author –
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五千枚のメモ用紙に込められた執念――M社長の経営計画
ある日、M社長という全く面識のない人物から電話がかかってきた。彼は私の著書『経営計画・資金運用』を読んで感銘を受け、全く新しい視点で作成した経営計画について直接意見を聞きたいという。一方的な依頼だったが、その熱意に押される形で、何とか時間... -
重傷を負いながらも経営を見据える――三紅印刷の古川社長の覚悟
三紅印刷の古川社長が名神高速道路で交通事故に遭い、救急病院に搬送されたとの報せが入った。幸い、負った怪我は右手首の骨折と肋骨の軽いヒビだけで済み、大事には至らなかった。しかし、その状況を知れば知るほど、古川社長の経営者としての姿勢に心を... -
陣後督戦型社長の迷走
業績が低迷している企業の社長の中で典型的なのが、「陣後督戦型」の社長である。彼らは自ら先頭に立つことを避け、部下の努力や成果に依存して業績の改善を目指す。だが、この姿勢は経営者としての責任を放棄したも同然であり、結果的に組織の停滞を招く... -
組織いじりという空しい処方箋
L社の社長は、組織改編に並々ならぬ熱意を注ぐ人物だ。年間に3~4回もの頻度で組織を変更し、その理由を「経営が思うように進まないのは組織に問題があるからだ」と説明している。彼にとって組織いじりは単なる趣味ではなく、会社の業績不振を解消するため... -
空しい努力――自己満足の経営が生む悲劇
T産業の社長やN社の社長のような叱咤型のリーダーたちは、突出した個性と異常なまでの熱意を持ち、経営に対して真摯に取り組んでいる。知識を深めるための努力を惜しまず、全力で会社を引っ張ろうとするその姿勢には一見、感服させられる。 しかし、彼らの... -
動き回る社長が会社を停滞させる paradox(逆説)
T産業の社長、S氏は驚異的な行動力とスタミナを持つ人物だ。朝早く家を出て、日中には複数の取引先を訪問し、10時頃に営業所へ戻ると、立て続けにかかる電話に対応しながら、商談を次々と処理していく。その手際は確かに鮮やかで、社員たちを圧倒する。 し... -
「能力に合った仕事」を与えるべきという幻想
人間関係論の専門家たちはしばしば「部下にはその能力に見合った仕事を与えるべきだ」と説く。一見するともっともらしい正論に聞こえるが、実際には誤った前提に基づいた思い込みに過ぎない。この論法を真に受ければ、経営者は部下の能力を完全に把握し、... -
カウンセラー常務の功罪:システムが逆効果を生むとき
B社の社長にとって、社員たちの勤労意欲の低さと社内に蔓延する不平不満は最大の悩みだった。特に、些細な個人的な問題や自己中心的な要求が、次々と社長の元に持ち込まれる状況は、経営において深刻な障害となっていた。 「一倉さん、他の会社でもこんな... -
「僕は株主様だ」――社員持株制度が生む企業と社員の共栄
昭和40年の秋、あるトップセミナーで出会ったのがS酸工のS社長だった。セミナー後、彼が宿泊先を訪ねてきて語った話の中で、特に印象に残っているのが、同社で導入していた社員持株制度についてだった。 創業期の苦境から生まれた制度 創業間もない3年前、... -
一国一城の主を目指せる会社
N製作所は社員数わずか20名ほどの小さな会社だ。しかし、その存在感は小規模企業という枠に収まらない。「山椒は小粒でもピリリと辛い」という言葉がぴったりの、業界内でも一目置かれる存在だ。主な業務は小型の自動旋盤を使った部品加工であり、業績は堅...