implex1023– Author –
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常識とは、智・情・意の調和である
人として世に処するにあたり、最も欠かしてはならぬものが常識である。常識とは、事に当たって奇矯に流れず、また頑なにもならず、善悪是非と利害得失を見分け、言動を中庸に保つ力である。 この常識の本体は、「智」「情」「意」の三つの力が調和した状態... -
忠と孝を根に据え、沈思黙考して事にあたれ
人の意志は、生まれながらに強固であるものではない。されど、正しき心の柱を立て、思慮深く物事に臨むことで、その意志は磨かれ、鍛えられていく。 その柱こそ、「忠」と「孝」である。忠とは、公に対する誠、孝とは、私に対する義。この二つは、人として... -
学びとは、日々の注意から始まる
人は誰しも、生涯にわたり学び続けねばならぬ。書を読むだけが勉強ではない。世の事物に目を凝らし、心を留めること。これもまた、学問と同じく大切な務めである。 知識は書物に在り、経験は世に在る。書は読めば語るが、世は問わずして語らぬ。されど、日... -
行為の善悪は、志と所作を量ってこそ見える
人を評価するとき、目に見える行為や言葉だけで、その善し悪しを即断してはならぬ。 行為とは、志と所作とが織りなすものである。どれほど立派な振る舞いに見えても、その裏に私利私欲があれば、それは偽善の衣をまとった悪である。 反対に、粗野で拙い行... -
真の才知は、常識に宿る
人が世において真に役立つとは、単に知識が多いとか、才覚があるということではない。公の務めにあっても、私の生活においても、真に求められる力は、常識である。 常識とは、何も平凡を意味せぬ。それは、理非曲直を弁え、物事の順序を正しく理解し、人と... -
偉さより、まず常識を持て
世には、「偉い人」と称される者がある。その人の中には、性格に多少の欠陥があろうとも、なお余りある一芸・一徳・一能によって、人の上に立ち、世に名を残す者がいる。 その偉さは、確かに世の進歩を促し、新しき道を切り拓く力ともなろう。余もまた、か... -
習慣は、若き日の己をつくる
人は、幼き頃より青年期に至るまで、極めて習慣に染まりやすい。 この時期につけた癖は、やがて性格となり、人格となり、そのまま人生の基調となっていく。 怠ける癖、怒りを抑えぬ癖、虚飾に流れる癖、己を省みぬ癖――いずれも若き日のうちに芽を出し、気... -
道理にかなえば、助けは自然と集まる
人は、頼まれて動くばかりではない。道理が通っていれば、誰に言われずとも手を差し伸べたくなるものだ。 世話を焼くとは、義務や負担ではない。そこに正しさや誠意があると感じれば、人は自ずと力を貸したくなる。 反対に、どれほど口で美辞麗句を並べて... -
己を立てて、世を進めよ
人はまず、一身を立てねばならぬ。食を得、家を持ち、学び、技を磨き、自立した人間として世に処することは、生きる者の第一の務めである。 しかし、それに止まってはならぬ。己一人が富み、己一人が満足していても、世の中が荒んでおれば、その幸福は長く... -
言葉は福ともなり、禍ともなる
言葉とは、不思議なものである。ひと言が人を励まし、またひと言が人を傷つける。口から発するものにこそ、福もあり、禍もある。 余のごとき、多くを語る者は、往々にして禍を招くこともある。不用意な発言、過度の饒舌は、ときに人の信を失い、己を損なう...