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📜 引用原文(日本語訳)
あれこれ考えて心が乱され、愛欲がはげしいのに、
愛欲を浄らかだと見なす人には、
愛執がますます増大する。
この人は実に束縛の絆を堅固ならしめる。
――『ダンマパダ』 第三章「愛執」より(一部)
🔍 逐語訳
- あれこれ考えて心が乱され:思慮や妄想にふけり、心が静まらず騒がしくなること。
- 愛欲がはげしいのに:欲望の衝動に強く駆られている状態。
- 愛欲を浄らかだと見なす人:欲望そのものを肯定的・美しいものと錯覚する者。
- 愛執がますます増大する:執着の心が肥大化していくこと。
- 束縛の絆を堅固ならしめる:自らの心をさらに執着の枷(かせ)で縛ってしまうということ。
💬 全体現代語訳(まとめ)
人は、欲望に翻弄されながらも、それを「美しいもの」「正しいもの」として誤解しやすい。そうした思い込みが、かえって愛執を深め、心の自由を失わせていく。愛欲を美化し、自らを納得させることは、結果としてより強い執着と束縛を生む原因になる。
🧭 解釈と現代的意義
この句は、人間の本能的な「欲」に対する誤った認識と、それによって生まれる精神的な不自由を警告しています。私たちは「これが愛」「これが幸せ」と信じて疑わないものが、実は己を縛る幻想であることが多い。現代では消費や恋愛、自己承認欲求など、あらゆる“執着”が正当化されやすい時代です。しかしそれは、自己を縛る見えない鎖にもなり得るのです。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
承認欲求の暴走 | 「評価されたい」「賞賛されたい」との思いが強まるほど、仕事の本質から逸れていき、疲弊と失望を招く。 |
物欲・地位欲の錯覚 | 昇進・収入・所有物を“幸せ”と誤認すると、それが得られないとき心が乱れる。 |
本質を見失わないマネジメント | 「社員の満足」や「顧客のニーズ」を取り違え、“迎合”に走ると、かえって本質的価値を失う恐れがある。 |
ブランディングと執着 | 自社ブランドへの過剰なこだわりは、柔軟性を失い、成長を阻害する結果にもつながる。 |
🪷 心得まとめ:感興のことば
「愛欲に浄さを見れば、執着に飲まれる。
その誤解が、心を縛り、自由を奪う」
執着そのものが苦ではない。「それが清らかである」と錯覚する心こそが、真の問題である――これがブッダの眼差しです。現代人の生活でも、物質的な快楽や社会的承認を「正しい」と思い込むことは多いでしょう。しかし、それは“自由”から遠ざかる行為でもあるのです。
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