目次
📖 引用原文
愛するものから憂いが生じ、愛するものから恐れが生ずる。愛するものを離れたならば憂いは存在しない。どうして恐れることがあろうか？
——『ダンマパダ（法句経）』第5章「愛するもの一」
🧩 逐語訳
- 愛するものから憂いが生じ、
人は愛着を抱くものを失うことを恐れ、それによって心が乱れる。 - 愛するものから恐れが生ずる。
それを失うかもしれないという不安が、恐怖の源になる。 - 愛するものを離れたならば、憂いは存在しない。
執着を手放せば、心は苦しみや不安から解放される。 - どうして恐れることがあろうか？
執着がなければ、恐れるものも存在しない。
🔍 用語解説
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 愛するもの | 愛情、所有欲、こだわり、欲望など、自我が執着する対象すべて。 |
| 憂い（うれい） | 心配、不安、失うことへの悲しみ。 |
| 恐れ | 未来への不確実性や喪失に対する心の防衛反応。 |
| 離れる | 物理的な距離だけでなく、心理的な執着を断つこと。 |
🗣 全体の現代語訳（まとめ）
この句は、「愛する」「執着する」という行為が、人間に苦しみや不安、恐れをもたらすことを示している。
それらの対象を手放し、依存をやめることができれば、心の悩みや恐怖から解放され、真の平安が得られるという教えである。
🧠 解釈と現代的意義
私たちは家族、友人、財産、地位、名誉、評価などに「愛着」を抱きがちです。
しかし、それらはすべて無常であり、いつかは失われる運命にあります。
この句は、「愛すること＝悪」と説いているのではなく、「過度な執着が苦しみの元」であることを指摘しています。
現代人にとっては、「愛してよい、でも執着するな」というバランス感覚が求められているのです。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
| 観点 | 適用例 |
|---|---|
| プロジェクト執着 | 担当案件や自社プロダクトへの過度な執着が、変化への抵抗・判断の誤りを招く。執着を離れ、冷静に全体を見渡す力が求められる。 |
| 評価への依存 | 上司や周囲の評価に心を縛られすぎると、不安やストレスに繋がる。自律的な価値判断を持つことで安定した行動が取れる。 |
| 所有と責任の混同 | 「自分の部署」「自分の部下」などの所有意識からの拘泥を手放すと、客観的で健全なマネジメントができるようになる。 |
| 人間関係 | 信頼は必要だが、依存や支配になってはならない。相手を尊重しつつ、心理的独立を保つ姿勢が大切。 |
🧭 心得まとめ
「愛することは美しい。だが執着は恐れを生む」
愛は育てるべきものだが、執着は手放すべきものです。
ビジネスでも人生でも、執着が深いほど、心は脆くなる。
手放すことでこそ、自由と平安が得られるのです。
愛に心を込めつつ、執着に心を縛られない――それが、強くしなやかに生きる智慧です。
コメント