目次
📜 引用原文(日本語訳)
八
人間のうちにある諸の欲望は、常住に存在しているのではない。
欲望の主体は無常なるものとして存在している。
束縛されているところのものを捨て去ったならば、
死の領域は迫って来ないし、
さらに次の迷いの生存を受けることもない、と、われは説く。
📖 逐語訳(意訳含む)
- 人間の中にある欲望は、変化せずにずっと存在しているものではない。
- 欲望の主体(=執着する「私」)も、また無常であり、移ろいゆく存在である。
- このように束縛されているもの(欲・執着)を断ち切ったならば、
- 死という輪廻の苦しみは近づかず、
- 再び迷いのある生(輪廻)を受けることもない。
- 私はそのように説く。
🧩 用語解説
- 常住(じょうじゅう):永遠に変わらず存在すること。仏教では否定される概念。
- 無常(むじょう):すべての存在は変化し続け、永続しないという真理。
- 束縛:欲望や執着により、自由な精神を失った状態。
- 死の領域:死後の苦、または生死を繰り返す輪廻の世界。
- 迷いの生存:無明(真理への無知)に基づく新たな生の苦しみ(=輪廻転生の連鎖)。
🪞 全体の現代語訳(まとめ)
人間の中にある欲望は永遠ではなく、絶えず移ろいゆくものだ。そして、その欲望に執着する“私”という意識そのものもまた、無常である。だからこそ、執着のもとを断つことができれば、苦しみの輪廻から解放される。「死」を超え、「再び迷う生」に堕ちることもない。それが真理であると仏陀は説く。
🧠 解釈と現代的意義
この章句は、「欲望も自我も、変わりゆくものにすぎない」と明確に指摘します。現代人は「自分の欲望」や「自分自身」に固い同一化を持ちがちですが、その固定された“自己イメージ”こそが、苦しみの根本原因です。この章は、それらを「本質的には無常」と理解することによって、苦しみの連鎖(心理的輪廻)から解き放たれることができると教えてくれます。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
変化への柔軟性 | 「欲しい」「こうでなければ」という固定観念が、新しい状況への対応を妨げる。無常を受け入れることで進化できる。 |
アイデンティティの更新 | 過去の成功体験や肩書に固執することが、次の成長を妨げる“輪廻”となる。時に手放す勇気が必要。 |
ストレスとの関係 | 欲求が満たされないことで生じる苦しみは、「それも一過性である」と捉えることで軽減できる。 |
長期ビジョンの形成 | 一時的な欲や市場の浮き沈みに振り回されず、より根源的な価値に基づいた経営判断を行う。 |
🧭 心得まとめ(座右の銘風)
「欲も自我も、波のごとし。執着せねば、苦しみは消える。」
変わりゆくものに心を縛られてはならない。
離れゆくものは追わず、変わるものには抗わず。
そこに、真の自由がある。
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