目次
📖 引用原文(日本語訳)
一六
好きな人だからといってなじんではならない。
ひとはそこで砕かれてしまう。
清い信仰心の無い人を遠ざけて、
清い信仰心のある人に近づく。
以上、第一〇章「信仰」まとめの句
(一)無常 (二)愛欲 (三)愛執 (四)はげみ (五)愛するもの
(六)戒しめ (七)善い行ない (八)ことば (九)行ない (十)信仰
——これらにより「十(ダシャ)なる徳目」が整う。
📝 逐語訳
- 「好きだ」という感情だけで人と深く交わってはならない。
- なれ合いや依存は、あなた自身を損なう原因となる。
- 信仰心の清らかでない人を遠ざけ、
- 清らかな信仰を持つ人に近づくこと。
- これこそが、「信仰の章」の最後の戒めである。
🧩 用語解説
- なじむ/なれ合い:
情に流されて分別を欠いた関係を持つこと。相手の内面よりも、心地よさや親しさを優先する態度。 - 砕かれてしまう:
精神の軸が折れ、自身の信条や志が揺らぐこと。影響を受けて堕ちることのたとえ。 - 清い信仰心:
真理・徳・他者への慈しみに基づいた、澄んだ心からの信仰。 - 信仰の十徳(ダシャ・グナ):
第一〇章のまとめとして、信仰を支える十の実践要素。後述します。
💡 全体の現代語訳(まとめ)
どれほど好ましく思う相手であっても、
信仰や徳を持たぬ者との交わりは、やがて自分自身を蝕む。
その優しさがあなたを救うとは限らず、時には信仰を曇らせる毒ともなりうる。
だからこそ、
感情よりも、真理に近い者を選び、信ある人とつながることが肝要である。
🔍 解釈と現代的意義
この節は、**「付き合いの基準を感情ではなく価値観に置け」**という、現代にも響く教えです。
- 「気が合う」人が、あなたを高めるとは限らない。
- 「耳ざわりのいい」人が、真実を語るとは限らない。
だからこそ、
真理・信念・善性を大切にする人と交わり、
自分自身もその道に立ち続けることが、精神の持続と成長の鍵になるのです。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
人間関係の健全性判断 | 「好き」「面白い」よりも、「誠実さ」「信頼できるか」を人間関係の基準とする。 |
採用・協業の判断基準 | 能力・親しさだけでなく、その人の根底にある価値観や倫理性を見ることが重要。 |
組織文化の形成 | よく話す人、ウケのいい人がリーダーになるのではなく、信念と善性を持った人が軸となる文化を育む。 |
自分の軸を守る人間関係選び | 「この人といると軸がブレる」という感覚を軽視せず、精神的安定を優先する選択が、仕事でも効力を発揮する。 |
✨ 心得まとめ
「好きだから、ではなく、信じられるから交われ」
感情に引かれて築く関係は、一時の安心であっても、
長く続けばあなたの信仰と精神を損なう。
ギーターは告げる——
「親しさではなく、徳にこそ、つながりの基準を置け」
🏁 第一〇章「信仰」まとめの構成(十徳)
この章は以下の十の徳目で構成されています。いずれも「信仰に生きる」とはどういうことかを段階的に示したものです。
番号 | 主題 | 内容の要点 |
---|---|---|
一 | 無常 | 人生のはかなさを見つめ、信仰の支えを持つこと。 |
二 | 愛欲 | 愛欲に溺れず、真理への志向に立ち返ること。 |
三 | 愛執 | 執着を離れ、清らかに与える姿勢を持つこと。 |
四 | はげみ | 修行と努力を通して、信仰を鍛えること。 |
五 | 愛するもの | 愛する人よりも信じる道を選ぶ勇気を持つこと。 |
六 | 戒しめ | 自律・節制により、精神の清浄さを保つこと。 |
七 | 善い行ない | 日々の行動を通して、信仰を表すこと。 |
八 | ことば | 誠実な言葉と沈黙に、信仰の真実が宿る。 |
九 | 行ない | 信仰を口先でなく、実践で示すこと。 |
十 | 信仰 | 上記すべてを貫く、生き方としての信。心の軸と指針。 |
コメント