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理想を語るな、理想に近づけ

志は立派でも、実行できてこそ価値がある

弟子の子貢(しこう)は、「自分が他人からされて嫌なことは、他人にも決してしないように心がけています」と孔子に語った。
この言葉は、いわゆる“己の欲せざる所は人に施すなかれ”の精神そのもの。
ところが、孔子はただちにそれを認めず、こう言った――
「賜(し)よ、それは立派な心がけだが、お前がまだ実際にそれを完全に行えているとは思わないよ」。
孔子はここで、理想を口にすることよりも、実際の行いとしてそれをどこまで体現できているかを重視していた。
この厳しくも愛情ある応答には、弟子の志を否定せず、しかし甘やかすことなく一歩先の成長を促す、師としての温かい視線が感じられる。


原文とふりがな付き引用

子貢(しこう)曰(いわ)く、我(われ)は人(ひと)の諸(これ)を我に加(くわ)えんことを欲(ほっ)せざるや、
吾(われ)も亦(また)た諸を人に加うる無(な)からんと欲す。
子(し)曰(いわ)く、賜(し)や、爾(なんじ)の及(およ)ぶ所に非(あら)ざるなり。

志を持つのは良い。
だが、それを本当に行えるかどうかが、君子とそうでない者を分ける。


注釈

  • 子貢(しこう)…孔子の高弟の一人。聡明で弁舌に優れるが、孔子からは時に厳しく導かれていた。
  • 諸を我に加えんことを欲せざるや…他人からそうされることを望まない。
  • 亦た諸を人に加うる無からんと欲す…だから自分も他人にそうしないようにしたい、という意味。
  • 爾の及ぶ所に非ざるなり…まだその境地には達していない、という意味。志は認めつつも、実践の難しさを指摘している。
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