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年計はどうか

年計は、会社の長期的な動向を正確に把握するうえで非常に役立つツールだ。一度年計を手にした優れた経営者は、その重要性に気づき、手放せなくなると口をそろえる。

毎日異なる会社を訪問している。同じ会社を訪れるのは月に一度程度で、二カ月に一度や三カ月に一度の会社も少なくない。

久しぶりに訪れる会社では、まず最初に年計グラフを見せてもらうようにしている。年計グラフを目にした瞬間、これまでその会社で手がけた取り組みが一気に頭に浮かぶ。それほどまでに、年計はその会社の状況を的確に語る重要な情報源だと言える。

総売上をはじめ、商品別、地域別、得意先別といった年計を確認するが、詳細に検討するまでもなく、見ただけで上昇、横ばい、下降の傾向が一目で分かる。その結果、実施した施策の効果を測定でき、次に手を打つべき課題が何かも明確になる。

考え方の順序としては、まず売上高の大きい項目から注目する。上昇傾向にある場合は、さらに成長させるための手を考える。一方、横ばいや下降傾向にある場合は、「放置するべきか、それとも何らかの手を打つべきか」を判断する必要がある。重要なのは、すべてのケースで「必ず何か手を打つべきだ」と焦るのではなく、慎重に取捨選択を行うことだ。

なぜなら、売上が伸びない原因は、会社の力が不足しているか、売上を伸ばす方法が見つからないかのどちらかであり、そのどちらも簡単には解決できる問題ではないからだ。

次に注目すべきは、特定の商品や得意先の売上高が総売上高に対して30%を超える比率になっているかどうかだ。もしそのような偏りがある場合、それはリスクを伴う偏重である。この偏りを是正するためには、他の商品や得意先の売上を増加させる施策を講じる必要がある。

特定地域の売上比率が総売上高に対して高い場合、それは危険な偏りではなく、その地域における自社の市場戦略が成功している証拠だ。さらに、この比率が上昇傾向にあるならば、それは会社の安全性が高まっていることを意味している。

その地域で必要な占有率を確保できているのであれば、それは自社の大きな強みと言える。この占有率を維持・強化しつつ、次の地域での占有率拡大を目指した戦略を進めていくべきだ。

次に注目すべきは、グラフの月ごとの変動が大きい場合だ。通常、年計は緩やかなカーブを描くものだが、変動が激しい場合、それは事業が不安定であることを示している。

多くの場合、個々の売上案件の金額が企業規模に対して過大であることが原因となっている。特に、土建業、プラント業、大型機械製造業、貿易業などの業種では、このような状況がしばしば見受けられる。

その結果、仕掛期間が長期化して資金が滞留し、入金が不安定になる。また、次の仕事へのバトンタッチのタイミングが合わず、場合によっては受け入れ態勢が整わないことで受注を逃すなど、さまざまな支障が生じる。このような問題を抱える企業では、事業の転換を検討する必要がある。

事業転換の目安としては、1件あたりの売価または受注金額を「従業員1人あたり1万円に0を1つ加えた額」、つまり10万円とする基準を考えるとよい。例えば、従業員が100人の場合、1件あたりの金額は100万円から1,000万円程度が適切となる。

輸出業であれば輸入ビジネスへの展開を検討し、土木請負業であれば小型の物件に受注を絞る戦略を採るべきだ。プラントメーカーの場合は、プラント全体ではなく一部に特化した専業メーカーに転換するか、中小型の産業機械分野へ進出する、といった方策が有効となる。

以上は年計に関する一般的な見方について述べたものである。各会社ごとの具体的な年計の分析については、「経営戦略篇」に複数の実例を掲載しているので、そちらを参照してほしい。また、半年計の分析方法や季節変動への対処については既に述べているため、ここでは触れないこととする。

年計は、企業の長期的な成長と安定性を見極めるために非常に重要です。優秀な社長ほど、この年計グラフを欠かせないものとして活用し、会社の傾向や対策を見出しています。特に年計は、月々の数字に影響されず、上昇、横ばい、下降のトレンドが一目瞭然です。

年計グラフで見るべきポイント

  1. 上昇・横ばい・下降トレンド
    売上が上昇傾向ならばさらなる成長施策を考え、横ばいや下降であれば「放置するのか、改善策をとるのか」を判断します。安易に手を打つのではなく、社の力や手段が足りない可能性も考慮する必要があります。
  2. 売上の偏り
    商品や得意先が総売上高の30%以上を占める場合、それは危険な偏りです。この偏りは、他の商品や顧客の売上を増やす施策で緩和することが望まれます。例として、ある企業では、円高の影響で特定商品の輸出が停止し、大きな赤字に転落するケースもありました。
  3. 地域別の売上比率
    地域別売上比率が高い場合、それはその地域での市場戦略が効果を発揮している証拠です。この地域の占有率が安定しているならば、会社の強みとみなされます。この成果を活かし、次の地域への展開を進めると良いでしょう。
  4. 月ごとの変動が大きい場合
    年計グラフは通常、緩やかなカーブを描きますが、月ごとの変動が大きい場合は事業が不安定である可能性が高いです。個別の売上や契約の規模が大きすぎる場合、受注と納品のタイミングが安定せず、資金繰りや事業の継続に問題が生じます。こうした場合は、業態や事業内容の転換が求められるかもしれません。

対策の例

  • 輸出業者ならば、輸入事業を検討する。
  • 土木・建設業者は、より小規模な案件に注力する。
  • プラントメーカーは、専業メーカーとして一部製品に特化するか、中小型産業機械の分野に進出する。

年計活用の重要性

年計は、社の経営状況を長期的に把握するのに欠かせない道具です。上記のポイントを参考にして、会社の収益や安全性を向上させる判断が求められます。また、年計は商品別や地域別、得意先別に分けて見ることで、会社全体の状況をより詳細に把握し、偏りや不安定要因を見つけることが可能です。

年計をしっかりと把握することで、経営計画の方向性や改善策が具体化し、長期的な企業の安定と成長に貢献します。

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