配賦は、製造業やサービス業において、直接的には特定の製品やサービスに関連付けられない費用(間接費)を、合理的な基準に基づいて特定の原価対象(製品、サービス、部門など)に割り当てる手法を指します。
配賦の概要
定義
配賦(Allocation)は、間接費を特定の基準に従って各製品や部門に分配する原価計算のプロセスです。間接費は、直接費と異なり、特定の製品やサービスに直接結びつけられないため、配賦によって合理的に負担を割り当てます。
特徴
- 合理的な基準の使用:配賦基準(作業時間、面積、使用量など)を設定して間接費を分配。
- 正確な原価計算:間接費を含む総原価を製品やサービスごとに計算可能。
- 管理と意思決定に寄与:部門別や製品別の収益性を分析する基礎。
配賦される主な費用
- 製造間接費
- 工場全体の運営にかかる費用。
- 例:光熱費、工場管理者の給与、設備の減価償却費。
- 管理間接費
- 会社全体の運営に関する費用。
- 例:本社の賃料、管理部門の人件費。
- 販売間接費
- 販売活動にかかる費用。
- 例:営業部門の交通費、広告費。
- 固定費
- 生産量や売上に関係なく発生する費用。
- 例:工場の固定資産税、リース料。
配賦の基準
配賦の基準は、間接費をどのように分配するかを決定する重要な要素です。適切な基準を選択することで、公平かつ合理的な原価計算が可能になります。
1. 作業時間基準
- 各製品やサービスの作業時間に基づいて配賦。
- 例:労働時間、機械稼働時間。
2. 使用量基準
- 間接費が実際に使用された量に基づいて配賦。
- 例:電力使用量、材料消費量。
3. 面積基準
- 使用面積や占有面積に基づいて配賦。
- 例:倉庫や工場の占有面積。
4. 売上基準
- 各部門や製品の売上高に応じて配賦。
- 例:販売部門間の広告費配分。
配賦方法
1. 直接配賦法
- 補助部門間の相互サービスを無視し、直接主たる原価対象(製品や部門)に配賦。
- メリット:計算が簡単。
- デメリット:精度が低い。
2. 階段式配賦法
- 補助部門間の一部サービスを考慮して配賦。
- メリット:比較的簡便で現実的。
- デメリット:相互配賦の完全な反映は困難。
3. 相互配賦法
- 補助部門間の相互サービスを完全に考慮して配賦。
- メリット:精度が高い。
- デメリット:計算が複雑。
配賦の計算方法
基本式
[
\text{配賦額} = \text{配賦対象費用} \times \frac{\text{各原価対象の基準値}}{\text{総基準値}}
]
計算例
データ
- 配賦対象費用:100,000円(工場の電気代)
- 配賦基準:機械稼働時間
- 製品Aの稼働時間:50時間
- 製品Bの稼働時間:150時間
- 合計稼働時間:200時間
配賦額の計算
[
\text{製品Aへの配賦額} = 100,000 \times \frac{50}{200} = 25,000 \, \text{円}
]
[
\text{製品Bへの配賦額} = 100,000 \times \frac{150}{200} = 75,000 \, \text{円}
]
配賦のメリットとデメリット
メリット
- 正確な原価計算が可能
- 間接費を合理的に配賦することで、製品やサービスごとの正確な原価を把握。
- 意思決定の基礎
- 配賦を通じて各部門や製品の収益性を分析可能。
- コスト意識の向上
- 間接費の配賦により、部門間でのコスト意識が高まる。
デメリット
- 配賦基準の選定が難しい
- 不適切な基準を選ぶと、原価計算の精度が低下。
- 計算が煩雑
- 特に相互配賦法では、計算が複雑になる。
- 主観的要素の影響
- 配賦基準の選定に主観が入りやすい。
配賦の改善方法
- 配賦基準の適正化
- 配賦基準を見直し、現実に即した基準を設定。
- 間接費の抑制
- 間接費を詳細に分析し、無駄を削減。
- 自動化の導入
- 原価計算システムを導入し、配賦の計算を効率化。
- 配賦基準の透明化
- 配賦のルールを明確にし、関係者に周知。
配賦の活用事例
1. 製造業
- 工場全体の光熱費や管理者給与を製品別に配賦。
2. サービス業
- 店舗間の共通費用(広告費や本部運営費)を各店舗の売上高に応じて配賦。
3. IT業界
- サーバー運営コストを各プロジェクトの使用量に応じて配賦。
4. 物流業
- 倉庫費用を面積や重量に基づいて配賦。
まとめ
配賦は、間接費を合理的に製品や部門に分配するための重要な手法です。適切な配賦基準を設定し、正確な原価計算を行うことで、コスト管理や意思決定の質を向上させることができます。
配賦を通じて、企業全体の効率的な運営と収益性の向上を目指しましょう!
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