N社は警報器の専門メーカーであり、空気式ラッパの時代から続く老舗だ。優れた技術力を有し、多くの優秀な人材を抱えている。
戦後、自動車産業の成長に歩調を合わせるように、N社も発展を遂げてきた。しかし、度重なる値下げが続く中で、収益性は徐々に低下。一方で損益分岐点は上昇を続けるという、典型的な悪循環に陥っていた。
それでも、売上が順調に伸びている間は、量をこなすことでなんとか乗り切っていた。だが、そんなN社に予想外の事態が降りかかる。警報器の使用制限令が発令されたのだ。
読者も記憶にあるだろう。かつて、自動車の流れが滞ると、停車中の車が一斉に警報器を鳴らすという騒々しい現象が起きていた。実は、あの滑稽ともいえる光景こそが、N社の製品の売上を支えていたのである。
使用制限令が出た途端、N社の売上は一気に25%以上も減少した。当時の損益分岐点が売上の90%付近に設定されていたため、この影響は甚大だった。結果として、会社は一挙に赤字へと転落してしまった。
私がN社を訪れたのは昭和39年の秋だった。その頃のN社は、巨額の繰越赤字を抱え、苦境の中で四苦八苦している状態だった。
支払手形のサイトは長期化しており、その影響で購入品や外注品のコストには高い金利が織り込まれていた。さらに、苦境を乗り越えるための多額の借入金と、依然として減らない融通手形を抱え、重い金利負担に苦しんでいた。加えて、身分不相応に多い交際接待費の大半は、資金調達のために費やされていたものだった。
Ｎ社は、警報器の使用制限令により、売上が一気に25％以上も減少し、損益分岐点を超える赤字に陥りました。この制限令は、自動車の流れが停滞したときにいっせいに鳴り響いていた警報器の使用を制限するもので、その需要減少が会社に大打撃を与えました。
Ｎ社は、長引く赤字と手形や借入金の負担に苦しんでいました。さらに、支払手形の期限が長いため、購入品や外注品のコストにも金利負担がかかり、資金繰りが厳しい状況に追い込まれていました。交際接待費も高額で、大部分が金融機関との取引を維持するために必要なものでした。
このケースのポイントは以下の通りです：
- 市場変動の影響
法規制による急激な需要減少が、収益構造に大きな影響を及ぼした。 - 資金繰りの問題
手形や借入金の増加に伴う金利負担が、収益を圧迫し、財務負担を重くしていた。 - 柔軟な対応の必要性
規制の影響を受ける製品に依存するビジネスモデルは、高いリスクを伴うため、迅速な対策や事業の多様化が求められる。
このように、Ｎ社の例は、市場や法規制の変化に柔軟に対応する体制や、資金管理の重要性を示しています。
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