――成長の道を歩むには、目先でなく“上”を目指せ
孔子は、人格と志の違いによって、人の成長と退歩が決まると語りました。
「君子(くんし)は上達(じょうたつ)し、小人(しょうじん)は下達(かたつ)す。」
ここでの「上達」とは、道徳・知識・行動すべてにおいて高みを目指し、実際に成長していくことを意味します。
君子は志を高く持ち、自らを磨き、他者や社会にも貢献できる人物。
一方の「下達」は、単に「劣っている」という意味ではありません。
むしろ、自らを低い方向に導き、欲望や利得にとらわれ、堕落していくことを指しています。
つまり孔子は、人は日々、上に進むか、下に流されるかのいずれかであり、
その違いは“志の持ち方”にあると明言しているのです。
原文とふりがな付き引用:
「子(し)曰(いわ)く、
君子(くんし)は上達(じょうたつ)し、
小人(しょうじん)は下達(かたつ)す。」
注釈:
- 君子(くんし) … 徳を求め、志を高く持つ立派な人物。自己を律し、理想に向かって学び成長する者。
- 小人(しょうじん) … 小利に動き、欲に流され、目先しか見ない者。自己の向上を志さず、浅薄な行動に走る人。
- 上達(じょうたつ) … 高い目標に向けて進み、道徳・学問・人格などが日々成長していくこと。
- 下達(かたつ) … 下劣なものに近づき、自らを卑しめていくこと。堕落の過程。
教訓:
この章句が伝えるのは、人の成長は「意志と志の高さ」で決まるという厳しくも温かい真理です。
- 志が高い人は、自らを磨き続けるから、自然と向上していく。
- 欲や打算に振り回される人は、自分で自分を下げてしまう。
だからこそ孔子は、「君子たれ」と弟子たちに求めたのです。
1. 原文
子曰、君子上達、小人下達。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、君子(くんし)は上達(じょうたつ)し、小人(しょうじん)は下達(かたつ)す。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
「君子は上達し」
→ 君子(徳ある人)は、高い理念・道義に向かって進もうとする。
「小人は下達す」
→ 小人(利己的な人)は、欲望や私利といった低い方向へと進んでいく。
4. 用語解説
- 君子(くんし):徳を備えた立派な人物。人格者。常に善・道理を志向する存在。
- 小人(しょうじん):利己的・打算的な人物。自己利益や私情に流される人。
- 上達(じょうたつ):高い目標・理念・道義・徳に向かって成長すること。
- 下達(かたつ):低い欲望・物質的利得・感情に流されること。精神的に退化・堕落していく様。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った:
「君子は常に高い理念や道義に向かって自己を高めていく。
それに対して、小人は欲望や私利といった低俗な方向に流れていく。」
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「人間の志向と成長の方向性」**を端的に表した教えです。
- 君子は内省し、徳を積み、道義を目指して自己を高める。
- 小人は目先の欲望・損得勘定・感情に流され、自己中心的に堕ちていく。
孔子は、「成長とは“何を求め、何を目指して進むか”で決まる」と説いています。
7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)
✅「上達する人材は“理念や価値”を見て動く」
- 経営理念や顧客価値に共鳴し、それに向かって行動する人は、組織の文化を支える人材となる。
✅「下達する人材は“損得・快不快”で判断する」
- 短期的成果や自己保身ばかりに目が向き、組織や社会に貢献しようという意識が薄い。
✅「自己の“志向の方向”を日々省みることが、君子への道」
- 日々の小さな選択の積み重ねが、「君子」か「小人」かの違いを生む。
- **理念に基づいて意思決定しているか?**と自問する習慣が、上達への第一歩。
8. ビジネス用の心得タイトル
「志の向きが人を分ける──上を目指すか、欲に流されるか」
この章句は、キャリアや組織人としての成長を考えるうえで、
**「あなたは何を求めて行動しているのか?」**という根本的な問いを投げかけています。
成果やポジションよりも、志と価値への一貫した歩みこそが、真の「上達=成長」である──
それが孔子のメッセージです。
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