目次
■引用原文(日本語訳)
一三*
眼のある人は、不平等のようなことがらに勇敢に打ち克つ。たとい何かが存在していても。
賢者は、この命あるものどもの世界において、悪いことがらを全く避けるべきである。
―『ダンマパダ』より
■逐語訳
- 眼のある人:真理を見る目、智慧を備えた人。目先ではなく、本質を見る者。
- 不平等のようなことがらに勇敢に打ち克つ:社会的・道徳的に偏った状況にも、恐れず立ち向かう。
- たとい何かが存在していても:理不尽や現実的困難があっても、それに妥協しない。
- 命あるものどもの世界において:あらゆる生命が共に生きるこの世において、
- 悪いことがらを全く避けるべきである:自己の利益のために悪に手を染めることなく、徹底的に悪を拒否すべき。
■用語解説
- 眼のある人:単なる知識人ではなく、「智慧の眼」を持つ人。仏教では仏や聖者を「有眼者」と称する。
- 不平等(不正義・差別):社会的・制度的な格差や不当な扱い。外から見て見えにくい構造的な悪も含む。
- 悪(あく):他者を損ねる行為、利己的な動機、あるいは不作為(見て見ぬふり)も含む。
- 勇敢に打ち克つ:単なる反発ではなく、智慧と慈悲をもって状況を変えようとする姿勢。
■全体の現代語訳(まとめ)
真理を見る眼を持つ賢者は、社会にある不正や不平等に対して、現実に屈することなく、勇敢に立ち向かう。
たとえどのような困難があっても、悪に加担せず、あらゆる命あるものへの尊重をもって、誠実に生きることが求められる。
■解釈と現代的意義
この偈は、「正義を見て、行動する力」についての仏教的提言です。
目の前に不公平や欺瞞が存在していても、それに妥協して「黙って従う」ことは、智慧ある者の道ではありません。
真に賢い人とは、「何が善で、何が悪か」を見極め、悪に染まらずに正しさを選び取る勇気を持つ人です。
現代社会においても、この教えは倫理的リーダーシップやソーシャルジャスティスの基盤となります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
倫理的判断 | 組織や業界にある「グレーゾーン」に対して、見て見ぬふりをせず、自分の良心に従う姿勢が信頼を築く。 |
リーダーシップ | 不正や差別的な構造があれば、静かに従うのではなく、それを是正しようとする行動が「真のリーダーの眼」である。 |
意思決定 | 利益や効率に流されるのではなく、悪を避けることを最優先に据えることで、長期的な健全経営につながる。 |
社会的責任 | ESGやダイバーシティ推進など、「命あるものの世界」における正義を考える姿勢が、企業の信頼性を高める。 |
■心得まとめ
「不正に目をそらすな。賢者は常に悪を避ける」
社会の不平等や不正に沈黙するのではなく、それを見つめ、恐れずに超えていく。
それが、智慧ある者の在り方であり、真の強さである。
――たとえ何が存在しようとも、悪を避ける勇気が、私たちの魂を汚れから護る。
この偈は、現代の「企業倫理」「公共性」「インクルーシブな意思決定」などにも関連する深い示唆を含みます。
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