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友のための忠告は、誠を尽くしつつ、引き際も心得よ

子貢が友人との関わり方について尋ねたところ、孔子は「まごころをもって忠告すべきだが、相手が受け入れないようであれば無理に押し続けてはいけない。しつこく言い過ぎると、自らの恥となることもある」と教えた。忠告とは、相手の心を思いやると同時に、節度を保つ知恵でもある。

目次

解説

この章句は、**友人関係における“忠告の作法”**を説いた非常に実践的な言葉です。

弟子の子貢が「友とのつき合い方」を尋ねた際、孔子はこう答えます:

「忠告して善く之を道(みちび)く。可かれざれば則ち止む。自ら辱めらるる無かれ」

ここには3つのステップがあります:

【1. 忠告して、善く導け(忠告して善道に導く)】

友人に過ちがあれば、誠意をもって助けることが友情の証
ただし、感情的になったり、上から目線で叱ったりせず、“善く導く”=思いやりと知恵をもって道を示すことが大切です。

【2. 聞き入れなければ止めよ(無理に押し続けない)】

相手がその忠告を受け入れなければ、いったん引く勇気も必要です。
過剰に介入すれば、かえって相手との関係を悪化させる可能性があります。

【3. 自ら恥をかくな(節度を保て)】

しつこく忠告して、相手に疎まれたり、反発されたりすることは、自分の品位を下げる結果になると孔子は諫めています。
善意の行動であっても、節度を欠けば、害にもなるという戒めです。

この章句は、善意であっても“行き過ぎ”は害となるという、人間関係の機微を教えてくれます。
とくに親しい間柄では、つい「相手のために」と言い過ぎてしまうこともありますが、本当の思いやりは、相手の自由と尊厳をも守ることでもあります。

原文

子貢問友。
子曰、忠告而善道之、不可則止、無自辱焉。

書き下し文

子貢(しこう)、友(とも)を問う。
子(し)曰(いわ)く、忠告(ちゅうこく)して善(よ)く之(これ)を道(みちび)く。

可(かな)わざれば則(すなわ)ち止(や)む。自(みずか)ら辱(はずかし)めらるること無(な)かれ。

現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「忠告して善く導く」
     → 心から相手のためを思って忠告し、誠実で丁寧に正しい方向へ導くこと。
  • 「聞き入れられなければ、そこでやめる」
     → どうしても相手が受け入れないなら、それ以上無理強いはせず、身を引く。
  • 「自らを辱めてはならない」
     → 無理に説得して自分が軽んじられたり、相手に侮られたりしてはならない。

用語解説

  • 子貢(しこう):孔子の弟子。弁舌に優れ、商才がありつつ道徳に熱心だった人物。
  • 忠告(ちゅうこく):誠意ある助言。心からの真実の言葉。
  • 善道(ぜんどう):優しく、的確に導くこと。相手の立場に配慮した指導。
  • 不可(ふか):受け入れられないこと、聞き入れられないこと。
  • 止む(やむ):そこでやめる、引く。
  • 自辱(じじょく):自分を辱める、価値を貶めること。自己否定や過度の介入による軽視を含む。

全体の現代語訳(まとめ)

子貢が孔子に「友人に対してどう接すべきか」を尋ねた。

孔子は答えた:

「友人が過ちを犯しそうなときは、心からの忠告をし、
相手を思いやる形で優しく導くのがよい。

しかし、それでも受け入れてくれないなら、
それ以上は言わず、身を引くのが賢明である。

過度に関わって、自分が侮られたり、傷つけられたりしてはならない。」

解釈と現代的意義

この章句は、**「友情と助言の距離感」**について、実に深い人間関係哲学を語っています。

  • 真の友情は“誠実さ”にあり、強制ではない
     → 忠告は“押し付け”ではなく“思いやり”。
     → 説得できなかったとしても、それが友情の終わりではない。
  • 聞き入れられぬ忠告は“引く”のが徳
     → 無理に踏み込むと、関係が壊れ、自分の品位も損なう。
  • “自辱”のリスクを避けよ
     → 自分の正義を押しつけすぎて関係を破壊したり、逆に軽んじられるような介入をしては本末転倒。

ビジネスにおける解釈と適用

(1)「後輩指導・部下育成は、忠と善のバランスで」

  • 誠実な指導は必要だが、相手の状況・反応を見て“やりすぎない”自制が重要。
     → “正しいことを言えば通じる”とは限らない。

(2)「アドバイスのし過ぎは、信頼を損なう」

  • 上司・先輩・同僚としての指導も、タイミングと受容力を見極める。
     → 相手が聞く体勢にないときは、一旦引くことも戦略。

(3)「自己価値を保ちながらの関係性が重要」

  • “言ってもムダ”な相手に執着することで、自分の尊厳や時間を損なってはならない。

まとめ

「導き、そして引く──忠告と敬意のバランスを保て」

この章句は、人との関わりにおいて「思いやり・誠実・自制心」の三徳が必要であることを教えてくれます。
善意が空回りしないよう、相手との距離を見極め、引き際を心得ることもまた、成熟した人間関係の証なのです。

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