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■引用原文(日本語訳)
「体と頭と首を一直線に不動に保ち、堅固〔に坐し〕、自らの鼻の先を凝視し、諸方を見ることなく、」
(『バガヴァッド・ギーター』第6章 第13節)
■逐語訳(一文ずつ)
- 体と頭と首をまっすぐに一直線にして、
- その姿勢を揺るがせることなく、しっかりと座り、
- 視線を鼻の先に固定し(凝視し)、
- 四方八方を見回すことなく、集中を保つべきである。
■用語解説
- 体・頭・首を一直線に(スンプター・グリーヴァ・シール・シャリーラ):姿勢を安定させ、エネルギーの流れと集中力を保つための基礎。背骨の直線化が鍵。
- 不動に保ち(サムプレークシャ・ナアサーグラム):動かさずに安定して保つ。内面的集中を妨げない静かな身体保持。
- 鼻の先を凝視(ナーサーグラム):視線を鼻先に置くことで視覚情報を制限し、思考を静める瞑想法(ドリシュティ)。
- 諸方を見ることなく(ナ・ディクシュ・チャナヴェークシェート):外界に注意を向けず、内面に意識を向けるための条件。雑念を断ち、集中を深める。
■全体の現代語訳(まとめ)
ヨーギンは、体と頭と首を一直線にし、安定した姿勢で動かずに座り、視線を鼻の先に定めて、
周囲を見回すことなく、集中した心を保つべきである。
■解釈と現代的意義
この節は、瞑想や精神集中のための身体的・視覚的準備を明確に述べています。
「心を整える」には、まず「身体を整える」ことが不可欠であり、姿勢と視線が心の安定に直結しているという東洋的身体論の根幹が示されています。
現代人にとっても、集中力や内省を深めるためには、まず「外の動き」と「視覚刺激」から自分を切り離すことが重要であると示唆しています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と適用例 |
---|---|
姿勢と集中 | 姿勢が崩れていると、思考も散漫になる。正しい姿勢は、集中と自己統制の土台となる。 |
デジタル・ミニマリズム | 四方(多方向)を見回す=多情報を追いかける状態を断ち、意識の一点集中を心がける。 |
面談や会議 | 落ち着いた姿勢と静かな視線は、相手に安心感と信頼感を与え、説得力を高める。 |
儀式的ルーチン | 瞑想・呼吸法・静かな着席などを仕事の前に行うことで、意識の切り替えが可能になる。 |
■心得まとめ
「動かぬ姿に、揺るがぬ心が宿る」
心を整えたければ、まず身体を整えよ。
視線を定め、外界から距離をとることで、内面の静けさが訪れる。
バガヴァッド・ギーターは、心の修行は「静かな姿勢と視線」から始まると教えている。
現代の私たちもまた、意識の集中と創造のために、身体と視線の統一を再発見する必要がある。
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