企業が持続可能な成長を実現するためには、商品ごとの収益性を正確に把握し、収益性に基づいた意思決定を行うことが不可欠です。
単位当たりの収益性や付加価値率を用いた分析は、収益性の高い商品を特定し、戦略的なリソース配分を行う上で強力なツールとなります。
(一)単位当たりの収益性の比較
商品ごとの収益性を測る基本的な計算式は次の通りです。
- 製造業では「加工高」
- 流通業では「粗利益」
このシンプルな計算式により、単位ごとの収益性を容易に比較できます。たとえば、商品Bが商品Aより収益性が高い場合、この計算式で即座に判断が可能です。
計算がシンプルであるため、現場でも迅速に活用でき、意思決定の質を向上させる実践的な方法です。
付加価値率を用いた期間当たりの収益評価
単位当たりの収益性比較は便利ですが、期間当たりの売上や収益を評価する際には、付加価値率を用いるとさらに効果的です。
この指標を使うことで、収益性を売上高に対する割合として捉えられるため、収益構造を簡潔に理解できます。ただし、付加価値率の分析でも、売上高そのものに目を奪われて収益性の本質を見失わないよう注意が必要です。
ケーススタディ:D社の商品分析と収益性の再評価
A商品とB商品の比較
D社では、売上高ナンバーワン商品であるA商品が陳腐化し、売上の急減が予想されていました。この状況に対し、代替としてB商品の売上拡大が検討されましたが、当初は量的にA商品の減少分を補いきれないと考えられていました。
しかし、収益性の観点から再評価を行った結果、次のような事実が明らかになりました。
- A商品の収益性
- 付加価値率:16%
- 過当競争により利益率が極端に低い。
- B商品の収益性
- 付加価値率:38%
- 高収益商品であり、同額の付加価値を得るために必要な売上高が少ない。
必要な売上代替額の計算
A商品の売上減少分を補うために必要なB商品の売上高は、次の計算で求められます。
0.16 ÷ 0.38 ≈ 0.42
つまり、A商品の売上減少額の42%の売上増をB商品で達成すれば、同額の付加価値を確保できることを意味します。この収益性の違いにより、A商品の売上減少をB商品で補うことは、予想以上に現実的であると判断されました。
戦略的意思決定のポイント
1. 収益性を基準に商品戦略を見直す
売上高ではなく、付加価値率や付加価値額を基準に商品の優先順位を再評価することが重要です。収益性の高い商品にリソースを集中させることで、収益の最大化を図るべきです。
2. 売上高減少への資金繰り対策を行う
A商品の売上減少に伴う資金繰りの課題が予想される場合、資金管理の強化や運転資金の確保が必要です。以下の方法が考えられます。
- 仕入れ条件や支払い条件の見直し
- 在庫の効率的な管理
- 運転資金の融資や短期借入の活用
3. 収益性を基にした積極的な販売戦略
高収益商品(B商品)の販売促進を強化し、適切なターゲット顧客へのアプローチを行うことが効果的です。また、販売プロセスの最適化やプロモーション活動を通じて、収益性を活かした成長戦略を展開する必要があります。
収益性分析の重要性
D社の事例が示すように、付加価値に基づく商品分析は、収益性の本質を見極め、経営資源を効率的に配分するための強力なツールです。
「売上高」に囚われず、付加価値率や利益率を重視する視点が、企業の成長と競争力の維持に直結します。
まとめ
結論として、企業が成功するためには、付加価値を中心に据えた商品戦略を構築し、収益性に基づいた意思決定を行うことが不可欠です。
この視点がなければ、表面的な売上高に惑わされ、本質的な利益を逃してしまうリスクが高まります。
経営者は、収益性を明確に把握し、的確な戦略を展開することで、企業の未来を切り開くべきです。
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