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慈しみの行為が、真の幸せを導く


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■引用原文(日本語訳)

第一〇章 暴力(ダンダヴァッガ)第132偈

生きとし生ける者は幸せをもとめている。
もしも暴力によって生きものを害しないならば、
その人は自分の幸せをもとめていて、
死後には幸せが得られる。

(『ダンマパダ』第132偈)


■逐語訳

  • 生きとし生ける者は幸せをもとめている:すべての生命あるものは苦を避け、安らぎを求めている。
  • もしも暴力によって生きものを害しないならば:他者を傷つけず、慈しみの心で接することができたなら、
  • その人は自分の幸せをもとめていて:自身の幸福を望みながらも、
  • 死後には幸せが得られる:その正しい行いの結果として、死後にも善き報いを得る。

■用語解説

  • 暴力によって害しない(アヒンサー):非暴力の実践。「アヒンサー」はインド哲学全体で重視される基本徳。言葉・態度・制度的構造を含めた「傷つけない生き方」を指す。
  • 死後の幸せ(パラローカ・スッカ):輪廻の中で次の生において得られる安穏や善趣への生まれ変わり。
  • 幸せ(スッカ):心の平安、調和、苦のない状態。外的な快楽よりも内的な安心と調和を指す。

■全体の現代語訳(まとめ)

すべての生命は、幸せを望んでいる。もしも他者を害さず、非暴力の心で生きることができたならば、その人は自らの幸せを正しく求めていることになる。その善き行いの結果として、死後にはさらなる安寧と報いが得られる。


■解釈と現代的意義

この偈は、前節(第131偈)との対句をなしており、「暴力による行いが悪果をもたらす」の対照として、「非暴力による行いが善果をもたらす」ことを明確に述べています。

ブッダの教えでは、行為の質が未来を形づくるとされます。すなわち、「幸せになりたい」と願う者は、他者の幸せを壊してはならないという原理です。

現代では、競争や効率の名のもとに、無意識に他者を害してしまうこともあります。しかし、この偈は静かに問いかけます――「あなたの幸せは、誰かを傷つけていませんか?」と。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
倫理的経営の重要性サステナブルなビジネスは、関係者すべてにとっての幸せを重視する。非暴力とは「誰も損をしない設計」である。
人間関係における非攻撃性会議や対話の中で「攻める言葉」ではなく「伝える言葉」を用いる。相手を害さぬよう心を配る人は、信頼される存在となる。
長期的成功の基盤づくり他者を犠牲にして得た成功は持続しない。善意と慈悲に基づいた行動こそが、死後ならぬ「次の世代」にも価値を残す。

■心得まとめ

「誰かの幸せを壊して得たものに、真の価値はない」

幸せになりたいと願うならば、まず誰かを不幸にしないことを心がけるべきです。
他者の生命、尊厳、自由を尊重しながら生きること――それは自らの幸せを真に願う者の行いであり、
その結果として、現世でも死後でも、調和と信頼に満ちた道が開かれていくのです。

非暴力とは弱さではない。最大の強さであり、未来への最大の布施である。

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