G社で初めて同行販売を試みた。特定の地域で三日間実施した結果、わずか数日で通常の三カ月分を超える売上を達成した。G社の社長も、こんなに効果的な販売方法があるとは想像もしていなかったようだ。しかし、その後は再訪問することなく放置してしまう。結果として、しばらくして大量の返品を受ける羽目になった。
実際のところ、売れたわけではなく、小売店に商品を置いてきただけの話だった。要するに、ただの押し込み営業に過ぎなかったのだ。同行販売の本質を理解せず、それを単なる売り込みと誤解していた結果である。
これをそのまま売上と勘違いしてしまうのだ。しかし、返り注文が来ない限り、それは「売れた」とは言えない。同行販売を実施する際、問屋の対応には二つのタイプがある。一つは、問屋自身のペースでルートを回る方式。もう一つは、そのメーカーの商品がよく売れている小売店だけを選んで訪問する方式である。
問屋のペースで回る方法では効率が悪い。小規模な店まで無理に付き合わされる可能性が高いためだ。一方で、よく売れる小売店だけを回る方法も問題がある。現場の実態を正確に把握できず、新たな有望店舗、いわゆるシンデレラ店を発見する機会を逃してしまうからだ。それでも、これらの欠点を理解した上で同行する必要がある。
同行販売は、メーカーの姿勢や意気込みを示す行為である以上、継続しなければ意味がない。しかし、メーカーのセールスマンが問屋のセールスマンと同行ばかりしているようでは、いつまでたっても自立することができず、いわば「乳離れ」状態から抜け出せないままになってしまう。
さらに、問屋のセールスマンにとっても、同行販売はありがた迷惑となる場合が多い。そのため、同行は月に何日かとあらかじめ日数を決め、残りの日は自主的に訪問活動を行うべきである。
同行販売の本質は、「同行」そのものに意味があるわけではなく、「訪問」にこそ価値がある。したがって、同行販売(実際には訪問活動)と自主訪問をバランスよく組み合わせることが重要である。
要するに、問屋と相談のうえで同行訪問の日数を決め、それ以外は自主訪問に充てればよい。ただし、自主訪問を行う場合には、訪問計画とその実施報告を問屋に提出する必要がある。これは、単に活動を共有するだけでなく、相手に「貸し」を作り、信頼関係を構築するための手段でもある。
自主訪問を効果的に行うためには、そのための情報を同行訪問を通じて収集することが必要だ。その情報とは、小売店の規模や格付け、立地条件、さらには店主の経営方針や意欲、熱意といった要素である。これらの情報を基に、自主訪問の計画を立てることで、より実りある営業活動が可能となる。
自主訪問にはさまざまな利点がある。同行販売では、どうしても問屋のセールスマンのペースに合わせざるを得ず、その結果として非効率的な訪問を強いられることが多い。この制約がある中での活動が、営業効率を下げる要因になることは既に述べた通りだ。自主訪問はこうした制約から解放され、自分の計画に基づいた効率的な活動が可能になる点が大きなメリットである。
同行販売では、言いたいことや聞きたいことを自由に伝えられないことが多い。その上、こちらが貸しを作ったつもりでも、相手が逆に貸しを作ったと感じている場合もあり、必ずしも関係構築に繋がらないことがある。さらに厄介なのは、同行販売すら許可しない問屋が存在するケースだ。このような問屋では、メーカーの働きかけが制限され、営業活動が一層難しくなる。
このような問屋に対しては、社長自らが直接説得に乗り出すべきだ。ただし、相手は強い警戒心を持っているため、簡単に態度を変えることは期待できない。焦らず根気強く、同行販売や自主訪問の意図やメリットを丁寧に説明し、信頼関係を築くことが肝要である。一度理解を得られれば、今後の取引や協力体制がスムーズに進む可能性が高まる。
このような場合、自社で実際に行っている成功事例を示すのが効果的だ。それでも相手が納得しない場合は、いったん引き下がり、再度アプローチする機会を待つのが賢明だ。ただし、私の経験上、このように頑なな問屋は、そもそも優れた会社ではないことが多いのも事実である。どうしても話が進まない場合は、無理に関係を続けるよりも見切りをつけ、他のパートナーを探すべきだと考える。
同行販売は単なる押し込み販売ではなく、顧客確保と小売店との関係構築を目的とした、メーカー側の姿勢を示す重要な販売手段です。以下に同行販売を効果的に行うためのポイントをまとめます。
同行販売の目的と効果
- 顧客確保のための姿勢示し
- メーカーのセールスマンが小売店を直接訪問することで、小売店に対してメーカーの姿勢と本気度を示すことができます。
- 返り注文の確認
- 一度の訪問で「売れた」と思い込むのは危険です。返り注文があるかどうかで、実際の販売効果を測ることができます。
- 継続訪問の重要性
- 一度きりの訪問では効果が薄いため、継続的な訪問を行い、小売店との関係を維持します。ただし、常に同行するのではなく、適度な頻度で自社のセールスマンが自主的に訪問する「乳離れ」も必要です。
効率的な同行販売の手順
- 問屋と協力した同行販売日を設定
- 同行販売の日程を定め、それ以外の日は自主訪問に切り替えます。この際、訪問計画と実施報告を問屋に報告し、関係強化を図ります。
- 訪問対象の小売店情報の把握
- 同行訪問で小売店の店格、立地、店主の方針や熱意などの情報を集め、自主訪問の際に役立てます。
- 自主訪問での柔軟な対応
- 自主訪問では問屋のペースに縛られることなく、自社の販売促進活動に専念でき、売場のディスプレイ調整や店主との関係強化に集中できます。
- 同行許可を得られない問屋への対応
- 同行販売や自主訪問を拒む問屋に対しては、社長自らが説得にあたるなどの工夫が必要です。それでも協力を得られない場合は、今後の取引を再検討するのも選択肢の一つです。
同行販売の本質は「訪問」にあることを理解し、問屋や小売店との関係を深めつつ、顧客の信頼を確保して販売を促進することが成功への道となります。
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