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■引用原文(日本語訳)
人間の絆を捨て、
天界の絆をも越え、
すべての絆を離れた人――
かれを、われは〈バラモン〉と呼ぶ。
(『ダンマパダ』第417偈|第二六章「バラモン」)
■逐語訳と語義
- Yo bandhanaṃ manussesu:「人間世界における絆(=執着・依存)を捨てた者」
- Devabandhanaṃ cha ubbhataṃ:「天界の絆(=善行への執着)さえも超えて離れた者」
- Sabbaṃ bandhanaṃ chetvāna:「一切の絆・束縛を断ち切った者」
- Tam ahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ:「そのような人を、私は〈バラモン〉と呼ぶ」
■用語解説
- 絆(bandhana):束縛・執着・関係性における縛り。仏教では「サンヨージャナ(繋縛)」とも呼ばれる煩悩の要素。
- 人間の絆(manussesu):家族・愛情・社会的役割など、人間関係を通じた執着。
- 天界の絆(devabandhana):来世の幸福や天界に生まれ変わることへの欲望や善への執着さえも含む。
- 一切の絆(sabbaṃ bandhanaṃ):上記を含む、すべての束縛やしがらみを意味する。
■全体の現代語訳(まとめ)
人間社会の関係や欲望への執着を断ち、
さらに、来世の幸福を願う天界への執着さえも超えて、
あらゆる執着・絆・束縛から自由になった者――
その人こそが、仏陀の言う〈バラモン〉である。
■解釈と現代的意義
この偈文は、仏教の中でも特に深い教えであり、「善いことをしたい」「天国へ行きたい」というポジティブな執着さえも手放せと説いています。
一見善く見える動機でさえも、「結果を求める執着」になってしまうと、それはまた一つの「絆」=苦の原因になるという鋭い洞察です。
現代社会においても、**「愛されたい」「評価されたい」「成功したい」**という思いが知らず知らずのうちに行動を縛り、心の自由を奪っています。
この偈は、「一切の結果への期待や執着を手放す」ことによってこそ、本当の自由と安らぎが訪れることを示しています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
評価や報酬への執着からの解放 | 他者評価や結果ばかりを追わず、使命と倫理に基づいた行動に徹する。 |
功績や成功へのとらわれを超える | 善行をしても、それを誇示せず、報いを求めずに動く姿勢が、静かで深い信頼を得る。 |
「結果」にとらわれない実践 | プロジェクト成功や数字だけでなく、プロセスに誠実であることが長期的な価値を生む。 |
自己超越型のリーダーシップ | 所有や結果から自由で、組織や社会の未来に奉仕する透明なリーダー像を体現する。 |
■心得まとめ
「すべての絆を離れてこそ、ほんとうの自由がある」
人は、
人との絆に縛られ、
善を求めてまた縛られる。
「家族のために」「会社のために」――
それすらも、無意識の執着となり、
心を捕らえて離さない。
けれど、
一切の絆を超えたとき、
人は、
真に自由になり、
静かな光を放つ。
その境地にある者――
それが〈バラモン〉、
縛られずして世界に在る者なのです。
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