企業経営において、目標を設定し、その達成率を追いかけることは一般的な手法です。しかし、果たしてそれが本当に正しいアプローチなのでしょうか?
多くの経営者は「率」を重視しますが、実はそれよりも「額」を意識したほうが、より現実的で効果的な経営判断ができる場合があります。
本記事では、達成率ではなく実績額に注目し、経営を成功に導くための考え方と実践的な視点について解説します。
「目標達成率」ではなく「実際の額」に注目すべき
私はこれまで10年間、経営者として会社を運営してきました。その中で、掲げた目標を完全に達成した(つまり達成率が100%を超えた)経験は一度もありません。
しかしながら、事業売却を除けば、前年の売上や粗利益額を下回ったこともありません。
では、なぜ目標を達成できないにもかかわらず成長を続けられたのでしょうか?
それは、「目標達成率」ではなく「実際の額」に注目して経営してきたからです。
仮に目標を102と設定し、その達成率が100%であれば実績は102になります。しかし、目標を200に設定して達成率が60%だった場合でも、実績は120です。後者のほうが、実際に得られる利益額は大きいのです。
企業経営では、売上、仕入れ、経費といったすべての指標が「額」で動いています。したがって、利益目標も「率」ではなく「額」に基づいて考えるべきです。いくら達成率が高くても、最終的に粗利益が経費を上回らなければ企業は存続できません。粗利益率や成長率といった「率」は、実績を測る補助的な手段であり、最終的な目標は「額」でなければならないのです。
差額を知ることが経営改善の鍵
経営では、目標を設定し、それを実行することで実績が出ます。この「目標」と「実績」の間に生じる差額は、社長が考える市場のニーズと実際の顧客のニーズとのズレを示しています。差額を把握することで、具体的な対策を打ち出すことが可能になります。
利益目標は単なる希望や可能性を示すものではなく、社長としての明確な意思を数字化したものです。この差額を理解し、修正していくことこそが経営の改善につながります。
たとえば、梨を100個、りんごを50個売る計画を立てたとします。しかし、実際には梨が30個しか売れず、りんごが80個売れたとします。この場合、計画に基づいて梨の売上を伸ばすべきだと考えるのは一見正しいように思えます。しかし、そもそも梨が売れない理由は「顧客が必要としていない」からであり、逆にりんごが売れる理由は「顧客がそれを求めている」からです。
この場合、梨にリソースを注ぎ込むよりも、りんごをさらに多く売るための施策を講じるほうが効果的です。計画は目標達成そのものが目的ではなく、社長の意図と顧客のニーズとのギャップを知るためのツールであり、そこから見える差を埋めていくことが重要なのです。
実績を伸ばす経営の本質
目標と実績の間のギャップを理解し、それを広げるのではなく埋めていくことで、企業の成長が実現します。そして、目指すべきは「率の達成」ではなく、実際の「額の増加」です。
経営者として必要なのは、目標を柔軟に見直しながら、実際の結果に基づいて戦略を再構築することです。
計画を立てることは大切ですが、それに固執するのではなく、市場や顧客のニーズを正確に読み取り、それに適応した行動を取ることが、経営を成功に導く最も重要なポイントだと確信しています。
数字は絶対額と傾向でみる
率より絶対額を優先するということについて記載しましたが、傾向もしっかりと捉えなければいけません。下記の記事で傾向についても記載しています。

※率をという概念を捨てるということは誤り
この記事では率より絶対額を優先するということを記載しましたが、全ての数値を絶対額だけで見るのは危険です。
例えば、10億円の売上、粗利益1000万円、粗利益率1%、原価率99%という結果が出た場合、明らかに原価率を下げるアプローチをしなければいけません。効率を上げるためには、このように率も把握しておく必要があります。
ただ逆に100万円の売上で、原価率1%で粗利が99万円出た場合は、明らかに粗利益額が少ないため、絶対額を追う必要があります。
このように複合的に考え、検討し、行動を決定していかなければいけないことを忘れないでください。
ただ率にこだわり出すと売上絶対額が落ちる傾向があるため、注意が必要です。
まとめ
経営において大切なのは、達成率ではなく実績額を重視することです。目標と実績の差額を分析し、顧客のニーズに柔軟に応えることで、計画を現実に合わせて進化させることができます。市場は常に変化しており、成功するためにはその変化に適応し続ける力が求められます。経営者として、額を基準に実績を伸ばしていくことが、企業の持続的な成長と成功への道筋となるでしょう。
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