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■引用原文(日本語訳)
「ただ苦しいからと言って、身体的苦痛を恐れて行為を捨てる場合、その人は激質的な捨離をなすもので、捨離の果報を得ないであろう。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第8節)
■逐語訳
ただ苦しいから、という理由だけで、または身体的な痛みを恐れて行為を放棄する者は、ラジャス(激質)に基づく捨離を行う者である。
そのような捨離からは、望まれる果報(功徳・解放)は得られないであろう。
■用語解説
- 苦しいから(ドゥッカミットヤー):苦痛、不快、ストレス、努力が必要など「快不快」に基づいた判断。
- 身体的苦痛(シャーリラ・ドゥッカ):体力的負担やストレス、労力への抵抗。
- 激質(ラジャス):三グナ(性質)のひとつで、欲望、衝動、感情的動機を特徴とする。
- 捨離の果報(ティヤーガ・パラ):無私の手放しによって得られる心の浄化や精神的成長、解脱などの報い。
■全体の現代語訳(まとめ)
行為を捨てる理由が「楽をしたい」「つらいから避けたい」というものならば、それはラジャス的(感情的・衝動的)な捨離であり、本質的な報いは得られないとクリシュナは明言する。
真の捨離とは、苦しみの有無ではなく、心のあり方と理解に基づくものでなければならない。
■解釈と現代的意義
この節は、「しんどいから」「大変だから」という理由で仕事や責任から逃げる行為が、自己成長を妨げることを教えています。
行為の価値は、楽かどうかではなく、意味があるかどうかで判断すべきです。
困難な中でも取り組むべきことをやり抜いた先にこそ、魂の浄化や信頼、人間的成長があるのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
困難な仕事の回避 | 難しいから、疲れるからと逃げると、成長や評価の機会を失い、次第に信頼も失われる。 |
挑戦からの撤退 | プレッシャーや責任から逃げる形の離脱は、短期的には楽でも、長期的には損失になる。 |
メンタルマネジメント | 苦しみの感情に支配されず、「なぜやるのか」という目的に立ち戻る姿勢が、仕事の持続力と信頼を生む。 |
■心得まとめ
「苦しみから逃げても、自由は得られない」
苦痛や困難から逃げるだけの捨離は、表面的な放棄にすぎず、心の解放にはつながらない。
『ギーター』は、感情に支配されない「理解ある放棄」をこそ、真の手放しと呼ぶ。
痛みの向こうにある学びと成長を信じて、一歩踏み出す勇気が求められている。
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